本研究では、最近申請者らが見出した感染防御におけるIL-27の骨髄系前駆細胞への分化増殖の増強能力を用いて、腫瘍形成におけるIL-27の役割について検討を行った。 まず、IL-27を遺伝子導入したマウスメラノーマB16F10細胞株(B16F10-IL-27)をマウスへ移植しコントロールベクターと比較したところ、有意に腫瘍の増殖抑制が観られたことから、腫瘍内へ浸潤している細胞を網羅的に解析したところ、腫瘍内へ浸潤している細胞がCD11b陽性のいわゆるミエロイド細胞であることがわかった。通常腫瘍内へ浸潤しているミエロイド細胞は、免疫抑制活性を有することで知られているが、B16F10-IL-27担癌マウスでは、腫瘍内へ浸潤しているミエロイド細胞は免疫抑制活性を抑制していることを明らかにした。 さらに、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージの増加及び誘導型一酸化窒素(NO)産生を明らかにした。加えて、Admix実験においては、B16F10親株と担癌IL-27から単離したミエロイド細胞を混ぜてからマウスへ移入すると有意に腫瘍を抑制する結果が得られた。加えて、担癌IL-27から単離したミエロイド細胞は、NO濃度依存的に直接的に腫瘍を殺していることを明らかにした。最後に、Ly5.2マウスへLy5.1マウス骨髄由来LSK細胞の移入実験によりIL-27は骨髄中のLineage-Sca-1+c-Kit+細胞(LSK細胞)を増加させることを明らかにした。 以上の結果より、IL-27は担癌時において造血幹細胞に直接作用することで髄外造血を亢進させ、抗腫瘍活性を有するM1型マクロファージへの分化増殖動員を促進することにより抗腫瘍活性を発揮するという新たなIL-27による抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにした。
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