研究実績の概要 |
悪性中皮腫細胞株H28より樹立したコネキシン(Cx)43強制発現株では、スニチニブ曝露によるアポトーシスの誘導にアポトーシス促進因子であるBaxとCx43との直接的な相互作用が重要であることを見出している。Cxは主に細胞膜上に発現しており、一方Baxは通常細胞質中に広く分布しているが、活性化により構造変化・ミトコンドリアへの移行を経てミトコンドリア機能の低下を引き起こす。よってスニチニブ曝露により細胞膜上のCx43がBax並びにBaxを活性化する因子との相互作用の場として機能しているのではないかと予想し、まずBaxの活性化因子の探索を行った。文献情報よりCx43とBaxの両方と相互作用する可能性のある分子としてPKC zeta, PKC epsilon, p38, JNKを選び出し、Cx43強制発現株においてスニチニブ曝露時の活性変化を評価したところ、JNKのみ2-4倍程度活性が上昇し、その他の分子の活性変化は認めなかった。このスニチニブ曝露によるJNKの活性化は親株のH28細胞では認めず、Cx43がJNKの活性化に重要であると推察された。そこで免疫蛍光染色により活性型JNK及び活性型Baxの局在を観察したところ、スニチニブ曝露初期に確かに両者が細胞質中で共局在していることが確認された。一方、Cx43をsiRNAによりノックダウンすると活性型JNK及び活性型Baxの発現が著しく低下し共局在も認めなかった。更にJNKがBaxの活性化に寄与することを検証するため、JNK阻害薬を処置後にスニチニブ曝露を行ったところ、活性型Baxの発現量並びにミトコンドリアへの移行の低下を認めた。以上より、Cx43がJNKの活性化に関与し、活性化したJNKがBaxを活性化しミトコンドリア移行を促進することでアポトーシスを引き起こすことが示唆された。本検討結果は現在学会誌へ投稿中である。
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