計画3年目にあたる平成30年度には、研究の中核を担う外輪型二核遷移金属錯体のうち、二核ルテニウム錯体に関する研究について種々検討を行なった。前年度創製したキラル二核ルテニウム塩素錯体に対して種々の銀塩を作用させることにより、4種類のカチオン性キラル二核ルテニウム錯体の創製に成功した。今回創製した二核ルテニウム錯体および前年度に創製した二核ルテニウム錯体に関してX線結晶構造解析を行なうことで、α位にベンゾフタルイミド基が置換したδ-バレロラクタム構造を有する不斉配位子をもつ外輪型二核ルテニウム錯体は、シス型配置のものとメリジオナル型配置のものの2種類が配位子交換反応によって得られることを見出した。これまでに創製した新規キラル二核ルテニウム錯体の有用性を示すにあたり、ジアステレオ選択的な不斉オキサDiels-Alder反応に関して詳細に検討を行なった。本反応において外輪型二核ロジウム触媒に関して最適となる反応条件を創製したルテニウム触媒にて適用したところ、同様の選択性が発現した一方で収率が低下する結果となった。そこで、種々反応条件の検討を行なったところ、最適条件下において二核ロジウム触媒使用時と同等の収率および選択性で目的物が得られることに加えて反応時間と工程数の削減を達成した。このルテニウム触媒最適条件下では、ロジウム触媒は中程度の収率にとどまる結果が得られ、創製した新規キラル二核ルテニウムの有用性が示された。
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