研究課題/領域番号 |
16J04197
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 千絵 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | メリステム / イネ / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、単子葉植物であるイネを用いて植物のメリステムにおける幹細胞維持機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、これまでの解析により幹細胞数が増加することが示唆されている2つの変異体、fon2 1B-280およびfsp1に着目して詳細な解析を行った。 イネの幹細胞維持にはFON2遺伝子が負の制御因子として機能することが報告されている。fon2 1B-280は、fon2変異体に変異原処理を行って得られた亢進変異体である。fon2 1B-280において幹細胞マーカーの発現パターンを解析したところ、fon2単独変異体と比較して幹細胞数が著しく増加していることが示された。これは、fon2 1B-280の原因遺伝子がFON2遺伝子と密接に関連した機能を持つ可能性を強く示唆するものである。また、fon2 1B-280の原因遺伝子の時空間的発現パターンを解析し、これがメリステムにおいて機能している可能性を示した。加えて、FON2およびfon2 1B-280の原因遺伝子が制御する下流因子について解析するため、トランスクリプトーム解析を行った。データを解析した結果、fon2 1B-280で発現が大きく変動している遺伝子群が明らかとなった。 fsp1変異体については、遺伝子単離を目的としてマッピングを行った。結果、これまでの解析から座乗推定領域として考えていた染色体位置より少し離れた位置に、真の座乗推定領域が存在する可能性が強く示唆された。その領域にはFON2の受容体をコードするFON1遺伝子が座乗していたことから、fsp1変異体のFON1遺伝子配列を決定したところ、変異が見つかった。しかしながら、fsp1変異体の表現型はfon1変異のみでは説明できないため、おそらくfsp1変異体はfon1変異以外にも変異を持っていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りfon2 1B-280の詳細な解析を行い、幹細胞が顕著に増加していることを明確に示すことができた。さらに、fon2 1B-280の原因遺伝子の時空間的発現パターンを明らかにした。加えて、トランスクリプトーム解析など、当初の予定以上のデータも得ることができた。また、fsp1変異体の原因遺伝子の一つを単離することができた。
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今後の研究の推進方策 |
fon2 1B-280において幹細胞数が著しく増加していたことから、fon2 1B-280では幹細胞数を正に制御する遺伝子の発現が上昇している可能性がある。トランスクリプトーム解析により得られたデータ等を用いて、fon2 1B-280において発現が大きく変動している遺伝子を抽出する。得られた遺伝子について、その発現パターンや過剰発現体の表現型等を解析することにより、イネにおける幹細胞維持機構の解明を目指す。
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