減数分裂期における紡錘体形成の異常は不妊やダウン症などの先天性疾患の原因となりうることが知られているが、未だ原因は解明されていない。本研究は減数分裂期において紡錘体形成を制御する因子の探索を試みてきた。そこで卵母細胞における紡錘体形成に機能していることが報告されているPlk4の機能と特性の解明に焦点を当てた。昨年度の解析により、Plk4が自己集合する特性を持つことが明らかになっていた。今年度はさらにPlk4の自己集合特性と機能の解明を試みた。その中で、Plk4は自己集合により液滴状の構造体をつくる特性を持つことがわかった。Plk4集合体は互いに融合し、動的な代謝回転を示した。またPlk4の不活性化変異体や非自己リン酸化型変異体を観察すると、野生型とは異なり固いゲル状の自己集合体を形成することが明らかになった。これらの結果は細胞内と試験管内の両方で観察されたことから、Plk4は自己リン酸化によって自己集合体の物性を変える自己組織化特性を持つと結論づけた。さらにPlk4の物性の変化が微小管形成中心の一つである中心体の形成に影響を与えるかどうかを調べた。その結果、Plk4の物性が固い凝集体になるほど中心体の数が過剰に増加し、紡錘体の形成に異常が生じることがわかった。これらの結果から、Plk4の自己集合体の物性は適切な紡錘体形成のために制御される必要があることが明らかになった。これらの成果は論文としてまとめ、掲載受理された。現在は減数分裂期の紡錘体形成にPlk4の物性が影響するかどうかを引き続き調べている。特に卵母細胞では個体の年齢に伴い細胞質の老化が進み、染色体分配エラーの頻度が上昇することが知られている。Plk4自己集合体の物性も卵母細胞の老化に伴って変化する可能性があるため、細胞老化とPlk4の物性の関係、そして紡錘体形成への影響について解析を進めている。
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