気泡流やスラグ流などの気液二相流の流量計測では、速度分布が軸対称ではない場合が多く、高精度な流量計測のためには複数の測定線によって速度分布を計測することが求められる。 そこで、液単相非軸対称流を対象として、測定線数による流量計測精度への影響を評価した。試験部は直径D = 200 mmの水平円管とし、流量は80 - 500 m3/hとした。計測部の8D上流に邪魔板を挿入することにより、ベンド部下流を模擬した非軸対称流を発生させた。測定線は放射状配置とし、60度ごとに6つの超音波トランスデューサを管軸に対して45度の入射角で設置した。更に、管軸を挟んで向かい側のトランスデューサと超音波パルスを送受信できるよう、3本を上流向きに、もう一方の3本を下流向きに設置した。 向かい合うトランスデューサのペア3組により超音波パルスの送受信を行い、その往路と復路の伝播時間差を、軸対称及び非軸対称流の条件において計測した。その結果、どちらの流動条件でも伝播時間差は流量とほぼ比例関係にあるが、同じ流量で比較すると、すべての測定線で非軸対称流での伝播時間差の方が小さくなった。この結果から、伝播時間のみを用いた流量計測は混相流量計測への適用性が乏しいことが分かった。 次に、超音波パルスドップラ法を用いてそれぞれのトランスデューサにより速度分布を計測し、得られた速度分布を周積分することによって流量を算出した。その際、流量算出に用いる速度分布の数を変化させることによって測定線数による流量計測制度への影響を評価した。その結果、測定線数を3以上用いることで流量誤差が収束し、誤差0.3%未満となった。 混相流量計測では、必ずしも本実験で想定した速度分布にはならず、必要な測定線数が変化することが考えられるが、以上の結果により高精度な流量計測を実現するための測定線数について一定の基準が得られた。
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