研究課題/領域番号 |
16J04410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 英実 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | フレキシブルTFT / ゲルマニウム |
研究実績の概要 |
研究代表者は,フレキシブル基板上への結晶性Ge-TFT作製と、ホイスラー合金を用いた不揮発メモリの作製及びそれらを融合した不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTの創製を研究目的としている.まずはじめに,Ge粒子の電気特性を理解するための予備検討に着手し,フレキシブル基板上に形成した結晶性Geのホール移動度は190 cm2/Vs,キャリア密度が~ 5.0 × 10の17乗 cm-3 程度という非常に好ましい結果が得られた.しかし,この結晶性Geを用いてフレキシブルGe-TFTの作製を試みたが,TFTのオフ動作において多大なリーク電流が検出され,十分なオンオフ比が得られないという問題に直面した.この解決策を探るために詳細な物性評価を行ったところ,このオフ動作時のリーク電流を抑制するためには,TFT作製に適した結晶性Geの作製とゲート界面の平坦化が必要であると突き止めた. これを達成するために,TFT加工に適した結晶性Ge作製プロセスの再検討とTFT加工プロセスの改善を行った.今回,Ge層と触媒であるAu層の比率を変調することにより,Ge表面に生じる凹凸の程度が変化することを突き止めた.その結果,Au層に対するGe層の比率を増加させることにより,TFT加工により適した結晶性Geの作製に成功した.この結晶性GeをTFTに加工し,オフ動作時のリーク電流の抑制に成功した.また,TFT加工プロセス時に化学機械研磨による結晶性Geの平坦化と薄膜化を行い,電界効果移動度が21.9 cm2/Vs,オンオフ比が20という結果が得られた.この電界効果移動度の値は,低温で作製したp型の有機物半導体TFTや酸化物半導体TFTに比べて高い値を示しており,不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTへの応用が期待される重要な成果であると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は,フレキシブル基板上への結晶性Ge-TFT作製と、ホイスラー合金を用いた不揮発メモリの作製及びそれらを融合した不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTの創製を目指しており,DC1初年度において基板軟化温度以下におけるフレキシブル結晶性Ge-TFTの動作実証を行った.さらに,現状の課題を指摘し,解決することによりフレキシブルTFTの性能向上を達成した. しかし,高性能不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTの創製に向けて,さらなるオンオフ比の改善の必要があると考えられる.これに対して,フレキシブルGe-TFTの性能向上に向けた指針は既に得ており,ポストアニールや結晶Geと基板の界面にバッファ層を挿入することによって,Ge薄膜の結晶欠陥及び界面欠陥が低減されることが判明している.したがって,本研究課題の進捗状況は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は,フレキシブル基板上への結晶性Ge-TFT作製と、ホイスラー合金を用いた不揮発メモリの作製及びそれらを融合した不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTの創製を目指し,フレキシブル結晶性Ge-TFTの動作実証を達成したが,高性能化のためにさらなるオンオフ比の向上が必要である. DC1採択2年目においては,フレキシブル結晶性Ge-TFTのオンオフ比向上に着手する.具体的には,ポストアニールや結晶性Geと基板界面にバッファ層を挿入することにより,Ge結晶の結晶欠陥を低減し,フレキシブル結晶性Ge-TFTの性能向上を図る.これを達成した暁には,フレキシブルGe結晶上へのホイスラー合金のエピタキシャル成長に着手する. そして,DC1採択3年目においては,このホイスラー合金を用いて不揮発メモリ機能を有するトンネル磁気抵抗素子を作製し,室温スピン信号を観測する予定である.
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