研究課題
生物時計は睡眠や覚醒などの一日のリズム(概日リズム)を制御しており、その機能障害は睡眠障害や代謝疾患の原因となりうる。近年概日リズムを変える分子(生物時計制御分子)が化合物スクリーニングにより発見され始めており、時計遺伝子の関与する生物現象を理解する分子ツールや様々な疾患の治療薬のリード化合物となることが期待されている。しかしながら現段階において発見された分子は、構造活性相関研究がほとんどなされておらず、作用機序を生物時計制御分子で決定した報告も未だ数例にとどまっている。本研究では、生物時計制御分子の誘導化を行い、小分子によるほ乳類生物時計の制御および機構解明に挑戦した。当研究室では、これまでに新たな生物時計制御分子GO289の構造活性相関研究およびアフィニティプローブへの誘導化、合成したプローブ分子によるアフィニティ精製を行うことで、リン酸化酵素CK2 がGO289の標的タンパク質であることを明らかにしている。本年度は、GO289の作用機序の詳細を明らかにするためにGO289とCK2の共結晶化およびX線構造解析を実施し、その結合様式の解明を目指した。本研究は大阪府立大学の木下グループとの共同研究のもと行った。得られた結晶構造からGO289はCK2のATP結合部位に結合することがわかり、その結合様式についても明らかとなった。これまでCK2は生物時計への関与が示唆されるのみであったが、本分子をプローブとして用いることでその機構解明への貢献に期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
ほ乳類の生物時計制御分子GO289とその標的タンパク質であるリン酸化酵素CK2の共結晶化およびX線構造解析に取り組んだ。その結果、GO289の結合部位・結合様式の解明に成功した。また得られた結晶構造を参考にし、医薬品リード候補化合物の合成も達成していることから、今年度の研究進歩状況は期待以上のものであったと言える。
合成した医薬品リード候補化合物の溶解性や代謝安定性の評価を行い、その結果を反映させて再度構造活性相関研究を実施し、よりドラッグライクな構造へと変換する予定である。最終的には動物実験を行い、生体内における化合物の活性評価を実施する。
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