特別研究員は前年度に引き続き有理Gorenstein特異点、特に、シンプレクティック特異点と呼ばれる特異点のクレパント解消についての研究を進めた。 まず昨年度に国際誌に投稿していた商特異点に関する論文をレフェリーによるコメントを受けて改訂し、アクセプトに至った。この論文の結果によって商特異点がクレパント解消を持つかどうかの判定が(実際の計算は大変だが)理論上は可能になった。また、クレパント解消の構成や個数の計算も可能になっているなど、商特異点のクレパント解消についてはある程度まとまった結果が得られた。 特別研究員は商特異点の他に、ADE特異点を持つ曲面上の二点のヒルベルトスキームについて研究した。この研究対象は前年度から取り組んでおり、得られた結果は2つの論文にまとめ、学術誌に投稿した。 2つの論文の内の1つでは、上記のヒルベルトスキームがシンプレクティック特異点を持ち、そのクレパント解消の具体的な構成法を与えた。さらに、クレパント解消のファイバーがその特異点を特徴づけるということも示した。応用として、同じ特異点が単純Lie環のSlodowy sliceと呼ばれる多様体からも得られることを示した。 もう1つの論文は、単純特異点を持つcubic 4-fold上の直線全体の成す多様体もまた上記のヒルベルトスキームと同じ特異点を持つこと示した。1つ目の論文は特異点の局所的な性質を調べており、2つ目の論文ではその結果のコンパクトな多様体への大域的な応用を与えている。 特別研究員は平成29年度に2か月間ドイツのマインツ大学において研究活動に従事しており、その間に上記の研究を発展させることができた。
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