研究課題/領域番号 |
16J04500
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
峯 知里 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚的注意 / 注意捕捉 / 報酬 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,過去の経験によって獲得された報酬の情報が,どのように現在の視覚的注意の選択に影響を与えるのかを解明することを目指す。平成29年度は,以下3つの研究を実施した。 1つ目の研究は,オランダのVrije Universiteit Amsterdamにて,位置と報酬の連合が眼球運動に及ぼす影響を検討した。多くの先行研究では,ある刺激特徴(例:色)が報酬と連合されていた一方,本研究ではこれらの知見を発展させ,特定の位置が報酬と連合された。その結果,課題非関連な報酬と連合された位置は眼球運動を駆動し,標的刺激を注視するまでの時間を遅延させることが明らかとなった。 2つ目の研究では,注意を捕捉する報酬連合学習の必要条件を検討した。報酬と連合された課題非関連な特徴は,学習中様々な時間的位置に出現した。その結果,(1)特徴と報酬の連合形成に反応は媒介していないこと,(2)特徴と報酬の時間間隔には柔軟性があるが,特徴は報酬に先行する必要があることを示した。以上より,価値駆動的な注意捕捉における特徴と報酬の連合は,パヴロフ型条件づけによって生じていることが示唆された。これらの研究成果は,第81回日本心理学会の公募シンポジウムで口頭発表を行い,心理学分野の査読付き国際誌「Attention, Perception, & Psychophysics」に採録が決定している。 3つ目の研究では,報酬学習時の特徴に対する意識的な「見え」の必要性を検討した。連続フラッシュ抑制の手法を用いて報酬と連合された特徴を閾上あるいは閾下に呈示した。その結果,価値駆動的な注意捕捉を生じさせる特徴と報酬の連合が生じるためには,学習時に報酬と連合される特徴に対する意識的な「見え」が必要であることが示唆された。これらの研究成果は,第36回日本基礎心理学会及び第16回注意と認知研究会で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,価値駆動的な注意捕捉における刺激特徴と報酬の連合学習の過程を時間的な関係性から検討し,特徴と報酬の連合がパヴロフ型条件づけによって生じていることが示唆され,心理学分野の国際誌へ採録が決定した。また,報酬学習における意識的な「見え」を検討した研究においては,数多くのフィードバックを得ることができ,新たな問いが発見された。さらに,位置と報酬の連合学習に関する研究では,眼球運動の実験及び解析方法を修得し,位置と報酬の連合学習の影響が視覚的注意のみならず,眼球運動にまで及ぶことが明らかとなった。従って,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,第一に,報酬学習時の特徴に対する意識的な「見え」の必要性に関する研究を完成させるため,パラダイムを見直し追加実験を行う。第二に,価値駆動的な注意捕捉の時間的な側面を明らかにする。これまでの研究では,過去の学習によって報酬と連合された刺激が非自発的に注意を捕捉することが示唆された。しかし,注意が報酬連合刺激に捕捉された後,どの程度注意捕捉の効果が継続するのかは知られていない。この問いを明らかにするため,刺激と報酬の連合が注意のreorientingに及ぼす影響に着目し,空間的な注意の移動を評価することができる空間手がかり課題(Posner & Cohen, 1984)を用いて検討を進める。
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