RAB GTPaseは膜交通を制御する進化的に保存された分子であり,標的膜への特異的な繋留に関わる.これまでに,申請者は基部陸上植物であるゼニゴケのゲノム中からRAB GTPaseをコードするすべての遺伝子を同定した.さらにその発現パターンや細胞内局在を観察した結果,雄性生殖器で特異的に発現するRAB GTPaseを見出している.この雄性生殖器で特異的に発現するRAB GTPaseの機能解析を通して,膜交通が精子・鞭毛機能に果たす役割とその進化についての理解を目指した. 当該年度は,前年度に確立した精子形成過程のライブイメージング手法を用いて,精子形成過程における鞭毛関連因子の動態を明らかにした.さらに,ターゲットとしているRAB GTPaseのひとつについて,その細胞内動態の観察を行った.その結果,一部の鞭毛関連因子と類似する局在パターンが観察され,鞭毛機能への密接な関連が示唆された. また,そのRAB GTPaseの一次構造から,特徴的な機能ドメインを見出した.この機能ドメインに変異を加えると,変異体における精子の運動性の異常を回復できなくなることから,この機能ドメインが機能に重要であることが明らかになった. 以上の結果から,ゼニゴケの精子における鞭毛形成機構の一端を明らかにするとともに,ゼニゴケの精子が鞭毛機能を解析する上で重要なツールになりうることを示した.
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