研究課題
今年度は博士課程3年の年度に相当するため、年度前期は博士論文の執筆に必要なデータを得るための地球化学実験および数値モデルの解析に従事し、年度後期は博士論文および投稿論文の執筆を進めた。博士論文提出後はIODP(国際深海科学掘削計画)Expedition 356西オーストラリア掘削のサンプルの処理を進めた。博士論文は、東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻に2016年12月に提出し、2017年1月の博士論文発表会を経て、2017年3月23日に理学博士を取得した。年度前期に行った地球化学の実験では、白鳳丸KH11-1航海において北西オーストラリア・ボナパルト湾で採取された海洋堆積物試料に対して行った。特に放射性炭素年代測定は、貝・堆積物中の有機炭素に加え、底生有孔虫にも適用することができ、高精度の年代モデルの構築を行った。また、高知コアセンターでの元素質量分析器を用いた測定も終了し、採用第1年目の地球化学的手法を中心とした実験は計画通り進んだ。その結果、約250試料に及ぶ放射性炭素年代測定を行うことで高精度の年代モデルの構築が可能となった。その年代モデルと底生有孔虫の生息環境を指標とした古水深の復元結果からボナパルト湾の相対的海水準の復元を行った。それらの結果とGIAモデルを統合し、全球的な氷床最拡大期である最終氷期最盛期の期間を高精度で決定した。また、北西オーストラリアの堆積環境の変化を論じた論文が筆頭著者として、IODPの成果が共著として国際誌に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
採用1年目に予定していた化学実験は予定通り終了した。また、固体地球モデルをはじめとするモデル実験も順調に進んでいる。北西オーストラリア・ボナパルト湾の海水準変動によって引き起こされる堆積環境の変化を論じた論文が受理された。この研究は、地形解析と海洋堆積物の地球化学的分析を組み合わせた研究である。この成果は、堆積環境がモンスーンによる降水パターンによって変化するのではなく、海水準変動による地形の変化によって引き起こされる可能性を示しており、今後モンスーンをはじめとする古気候復元において進展が期待される結果である。また、IODPを通じた共同研究も順調に進捗し、共著論文が受理されている。上述のことから本研究課題は順調に進捗していると言える。
採用2年目は、IOPD(国際深海科学掘削計画)Expedition356西オーストラリア掘削の研究を進める。採取された試料の放射性炭素年代測定の前処理を進め、2017年度の2017年4ー6月にかけて大気海洋研究所のsingle stage AMSを用いて測定を行う予定である。また、2017年度は研究拠点を国立極地研究所に移し、固体地球モデルの開発・実験を進めていく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 18 ページ: 1,12
10.1002/2016GC006715
Geoscience Letters
巻: 3 ページ: 1,11
10.1186/s40562-016-0065-0