次世代の宇宙線観測実験を目指した開発研究として、直径1.6 m の複合鏡とその焦点面に4本の8インチの光電子増倍管を設置した低コスト型の新型大気蛍光望遠鏡による宇宙線観測を実施した。2016年から2018年までの間に米国ユタ州のテレスコープアレイ実験の観測サイトに合計3基の新型大気蛍光望遠鏡を設置し、日本からの遠隔操作によって定常観測を達成した。3基の新型大気蛍光望遠鏡で、仰角方向に30度と方位角方向に90度の視野角に到来する宇宙線を観測できる。そして、新型大気蛍光望遠鏡とデータ収集回路の統合試験として、21 km先の紫外線垂直レーザー光源を観測した。この信号は19.5乗電子ボルトの宇宙線が21 km先に到来した時に期待される信号に相当するため、新型大気蛍光望遠鏡が期待通りの性能を持っているかの検証になっている。加えて、30分ごとにレーザー光源は射出されることを利用し、その信号の大きさから時々刻々と変化する大気透明度を解析できることを明らかにした。 これまでの新型大気蛍光望遠鏡の観測運用で、累計515時間の夜間の観測時間を実施した。新型大気蛍光望遠鏡の測定データを使って解析した結果、これまでに観測できた宇宙線の中で最もエネルギーの高い宇宙線は1.7×10の19乗 eVのエネルギーを持ち、宇宙線の質量組成に依存する空気シャワーの最大発達深さ(Xmax)は842 g/cm^{2}であった。現在これらの解析結果をまとめ、学術論文としての投稿を準備中である。
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