研究課題/領域番号 |
16J04589
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
広瀬 浩介 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 寡占 / 立地戦略 / 参入阻止 / 複数財 / 相対利潤 / 外部性 / 共謀 / イノベーション |
研究実績の概要 |
申請者は、交付申請書の「研究目的」に示した"多品種生産における企業の戦略的相互関係"に関する分析ついて、本年度の研究成果を 1.研究予定としていた内容としていた内容と 2.その過程で得られた新たな問題について以下のように報告する。 1-1.多店舗を出すincentive:現実において企業が複数の店舗を立地させることが観察されているが、この行動を通常の産業組織論の理論では正当化することが難しかった。本年度以前から継続している研究である、Hirose and Matsumura(2016)にて、複数店舗戦略を相対利潤アプローチにより正当化している。本研究は、本年度9月に国際学術誌に掲載された。 1-2.多店舗戦略と参入障壁:複数店舗を立地する多店舗戦略が参入障壁を生み出す可能性を多段階のゲーム理論を用い分析を行った。論文をまとめ、国内でのワークショップで発表を行った。立地戦略への仮定を緩め解析的に一般的な命題を得ることは目標であったが、数値計算における検証に留まっている。 以上の研究を進める過程で、研究課題に関わる新たな問題に直面し、予定を若干変更し東京大学松村敏弘教授・Chonnam National University, Sang-Ho Lee教授と以下の共同研究を開始した。 2. 環境汚染消費財とabatement goods:鉄鋼やエネルギー産業のように、消費財を生産する過程でSox・NOxといった汚染物質を生成し負の外部性を生む産業が存在する。そのような産業において、企業はCSRの一環としてabatement goodsを供給(投資)し、費用を自主的に払い汚染物質を軽減させる行為が観察されている。この通常の消費財に加えたabatement goodsの供給行動を、産業団体を通した共同利潤最大化の観点から正当化し、論文にまとめた。本論文は、現在国際学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にある本年度の研究計画に加えて、その過程で更に研究課題に関わる新たな問題に直面し、興味深い結果を得ることが出来た。新たに直面した問題に関しては、すでに論文としてまとめ、国際学術雑誌に投稿することが出来ているため、当初の研究計画以上の成果として考えられる。一方で、当初予定していた研究計画に関して、国内でのワークショップで発表を行い有益なコメントを得ることが出来たが、例えば解析的に結果を得るという目標が数値計算による検証に留まっている点から、(1)ではなく(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
「多店舗戦略と参入障壁」に関しては、立地地点を一般へ拡張する可能性について引き続き検証する。同時に数値解によるシミュレーションの結果を参考に、国際学術誌に投稿できるよう論文をまとめる。一方、新たな研究課題として直面した「環境汚染消費財とabatement goods」に関しては、平成29年度に国際学術雑誌に掲載されるよう現在の研究を進める。また、以上に加え企業の研究開発と複数財に関する理論モデルを構築し、交付申請書の「研究目的」に示した"多品種生産における企業の戦略的相互関係"に関する理論分析を一層進める予定である。
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