申請者は、交付申請書の「研究目的」に示した"多品種生産における企業の戦略的相互関係"に関する分析ついて、本年度の研究成果を 1.研究予定としていた内容と 2.その過程で得られた新たな課題に対する研究について以下のように報告する。 1.多店舗戦略と参入障壁:昨年度より課題であった立地点の拡張に関して、4点、6点、8点と離散的に立地点を増加させることで漸近的に連続的な立地点におけるモデルの特徴を分析した。本年度までの研究成果をCredible Spatial Preemptionとしてまとめ、博士論文の一部に加え、国際学術誌に投稿予定である。 2-1.負の外部性を生む環境汚染財とabatement good:本研究は、鉄鋼業やエネルギー産業などの基幹産業のように、企業が消費財に加えてabatement goodsを企業は供給している市場への規制政策を分析した。総排出量規制と排出係数規制の代表的な2つの直接規制を比較し、どちらがより望ましいかを理論的に示した。分析の結果を松村敏弘教授との共同論文としてAdvantage of Emission Intensity Regulation for Emission Cap Regulation in a Near-Zero Emission Industryへまとめ、現在国際学術誌に投稿中である。 2-2.企業の製品戦略と消費者の限定合理性:企業がある製品を生産し、消費者が自身の好みに合った製品を選ぶ行動が本研究課題の最も基礎的な要素となっている。本論文では、reference dependentな消費者に対して企業がどのように製品差別化を試み、またどのような価格戦略をとるのかを分析し、その成果を東京大学大学院佐藤進との共同論文としてReference Dependence and Product Differentiationへまとめた。
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