磁場を有するDブレーン系の低エネルギー有効理論として知られる,余剰次元方向へ磁束(モノポール)のある高次元理論を扱った.前年度の研究成果の一つとして,背景磁場系におけるオービフォルド固定点への局在質量項による影響を調査した.ニュートリノの極小質量を与える模型として有望視されているシーソー機構では右巻きマヨラナ質量項が用いられ,模型自体が有しているパラメータをスキャンし,現在ニュートリノ振動実験により測定されているニュートリノ混合角,質量二乗差をフィットできることを確認した.近年T2K実験などで測定されつつあるCP対称性破れの位相(おおよそ,-π/2 [rad]と見積もられている)も説明可能であること,ニュートリノ質量の順階層のみが実現されることを明かした. 超対称ヒッグス質量項μ項の係数,通称μ係数は1 [TeV] = 1000 [GeV]程度であれば自然な電弱対称性の破れを引き起こせるとされているが,μ項を局在質量から実現すると,複素構造モジュラスの値がオーダー10程度のとき,つまりトーラスの半径の比が10倍程度の構造を持つとき,質量項の微調整がなくともμ係数は1 [TeV]程度まで軽くなることを明かした. 前者の研究は学術論文として執筆し現在論文誌に投稿中であり,後者は現在原稿執筆中である. またドイツのボン・ホーネフで行われた研究集会,加えて,東京女子大でのセミナーに招待され,講演を行った. ドイツ電子シンクロトロンの研究グループとの共同研究では,これまで共変場の理論で定式化していたゲージ理論を量子電磁力学の言語に書き換えることで,フラックスコンパクト化の理解を深めることに取り組んだ.
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