研究課題/領域番号 |
16J04721
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 卓見 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル相 / エンタングルメント / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
トポロジカル相を示すKitaev模型やクラスター模型などの一次元量子系に関して、様々な相互作用を変化させたときの相転移現象とダイナミクスを調べた。 まず、ダイナミクスを調べるための準備として、考察する模型の基底状態の相図を明らかにする。今年度はKitaev模型に様々な相互作用を加えたときに生じる相転移現象を解析した。具体的には、トポロジカルに異なる寄与をする相互作用を加えたときの基底状態の性質を調べた。厳密対角化とTEBDの数値的な解析と、場の理論を用いた厳密な解析により、この模型の基底状態の相図を明らかにした。様々な相互作用の結果、新たな相や臨界点が現れることが分かった。ストリング秩序パラメータとエンタングルメント、トポロジカル不変量を用いて各相を特徴づけた。 次に、相互作用を時間的に変化させることで、トポロジカル相におけるダイナミクスを解析した。具体的には、異なるトポロジカル相の間の臨界点を通過するように相互作用を変化させるスウィープダイナミクスにおいて、ストリング相関関数やエンタングルメントエントロピーの距離及び時間依存性を調べた。様々なスウィープダイナミクスを検討することにより、動的な過程においても、これらの物理量の間に関係があることを示した。とくに、励起状態のエンタングルメントから新たな物理的描像を得ることができ、物性物理学と量子情報科学の分野に新たな方向性を与えることができた。また、このダイナミクスはトポロジカルな性質に依存していて、トポロジカル相に特有の動的な現象であることが分かった。 最後に、非一様性があるときのトポロジカル相の安定性を調べた。具体的には、空間的に変調した外場を加えた時のKitaev模型を解析した。空間変調と相互作用の競合の結果、新たな相が現れることが判明した。その相をストリング相関関数、トポロジカル不変量、エンタングルメントで特徴づけを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究進捗状況はおおむね順調である。当初の予定通り、ダイナミクスに現れるトポロジカルな性質を明らかにすることができた。それに加えて、非一様性がトポロジカル相に与える影響を考察し、新たなトポロジカル相転移現象を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ランダム性があるときのダイナミクスを解析するための準備を行っている。具体的には、実空間繰り込み群と密度行列繰り込み群を用いた手法を開発中である。来年度はこの手法をKitaev模型やクラスター模型以外の量子系に適用し、多体局在効果をエンタングルメントの観点から研究する予定である。
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