研究課題
本研究では、不安定核のクラスター構造を実験的に探索する。現在、これに関する二つの研究(1)不変質量分光による中性子過剰核のクラスター構造の探索(2)欠損質量分光による超重水素鏡映核の探索、を行っている。(1)に関しては、多粒子測定スペクトロメータSAMURAIを用いた16Cの不変質量分光実験の解析を行い、国内外の学会等で発表を行った。本来の計画であれば、同様のセットアップを用いた32Mgの不変質量分光実験の計画を実験施設であるRIBFに提出する予定であったが、RIBFの施設側の方針で十分な強度の32Mgを得るために必要である48Caの一次ビーム供給が2019年夏頃まで不可能となった。これを鑑み、新たな実験計画の提出は見合わせている。16Cの実験については、特に重要である4He崩壊のチャンネルだけでなく、中性子を含むような崩壊チャンネルについても解析した上で投稿論文にまとめることを決め、さらに解析を進めている。(2)では、非束縛である超重水素核(7H,6H,5H)の鏡映核である7C,6B,5Beの探索を行う。これらの核は、中性子が1つであるのに対して、陽子の数が4から6つという原子核である。特に、7Cは3Heと4つの陽子という系で理解されるが、4陽子系は近年実験的に報告されている4中性子系の鏡映核にあたり、7Cという系内でどのように核子が分布しているのか(クラスターとなっているのか)という点でも重要である。本実験は、フランスの研究施設GANILにおいて採択されている。LISE3スペクトロメータによって生成した二次ビームを固体水素標的に照射し、2中性子移行(p,t)反応によって目的の系を生成する。生じた反跳tの全エネルギーと反跳角度を荷電粒子検出器MUST2で測定することで、欠損質量分法によって共鳴状態を測定する。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた、中性子過剰核の不変質量分光実験の次期計画については、実験施設の方針もあり見合わせている。解析中の16Cの実験結果については、新たに中性子崩壊のチャンネルを解析することによって、投稿論文にまとめる際に崩壊幅の情報を得た上でクラスター構造を議論することができるようになる可能性がある。これに向けて、現在解析が進行中である。新たな研究計画である欠損質量分光による超重水素鏡映核の探索実験については、実験自体は採択されており、近いうちに実施できる見込みがある。これについては、セットアップのシミュレーションや同様のセットアップを用いた実験への参加等を含めて準備が進行中である。以上をまとめると、本研究は総合的にはおおむね順調に進んでいる、と評価する。
16Cの不変質量分光実験の結果については、中性子を含めた解析を行い、投稿論文にまとめる。欠損質量分光による超重水素鏡映核の探索実験(E738実験)については、まず2017年夏頃GANILで行われるLISE3スペクトロメータと荷電粒子検出器MUST2を用いたE748実験に参加するために、フランスに渡航する予定である。E748の実験セットアップはE738実験のセットアップに非常に近く、実際にE738実験を準備し行う上でも有益であると考えられる。また、E738実験の遂行に向けて、フランスでの長期滞在も視野に入れた手続き等を行っている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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