• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

中性子過剰核におけるクラスター構造の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16J04726
研究機関東京大学

研究代表者

小山 俊平  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード不安定核 / クラスター / 非束縛共鳴状態
研究実績の概要

本研究では、不安定核のクラスター構造を実験的に探索する。現在、これに関する二つの研究(1)不変質量分光による中性子過剰核のクラスター構造の探索、(2)欠損質量分光による超重水素鏡映核の探索、を行っている。
(1)に関しては、多粒子測定スペクトロメータSAMURAIを用いた16Cの不変質量分光実験の解析をさらに進めた。クラスター構造を探索する上で重要である4He崩壊に加えて、中性子過剰核である16Cからの典型的な崩壊である中性子崩壊チャンネルについても解析した。こうした解析を進めるうちに、16Cから一中性子剥離反応で励起された15Cからの4Heを含む崩壊にも、幅の狭いピークを同定した。この15Cの励起状態は、クラスター構造とは異なる構造を持つ可能性があり、議論を進めている。こうした解析手法や結果について、国際学会で発表した。
(2)では、非束縛である超重水素核(7H,6H,5H)の鏡映核である7C,6B,5Beの探索実験(E738実験)を行う。E738実験と同様に荷電粒子測定器MUST2を使用する、フランスの加速器施設GANILのE748実験に参加した。実験データを持ち帰り、E738実験に備えた解析を進めた。これまでMUST2の解析では、欠損質量分光に必要な反跳の一荷電粒子のみの解析が主であったが、E738実験では、7C等が3Heと多数の陽子に崩壊し、その崩壊片もMUST2で検出されうる。こうした、一イベントに対して複数の荷電粒子がMUST2に入射するイベントのモデルケースとして、E748実験でバックグラウンドとして生成された8Be->4He+4He等のイベントに対して不変質量法の解析を行って既知のピークを同定することで、解析の妥当性を示した。E738実験は2018年の春から夏の間に行われる可能性が高く、実験に用いる理化学研究所の液体水素標的の準備も進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

16Cの実験については、中性子崩壊チャンネルに対する基本的な解析は終えることができた。その過程で、クラスターとは異なる物理を含む可能性のある15Cの実験結果も得ることができた。この15Cの結果は、同じ4He崩壊を扱っているという点で、16Cの実験結果をまとめる上でも無視できないものである。このように、一つの実験から異なる物理を含む可能性のある実験結果を引き出すことで、それぞれの実験結果に対して理解を深めるとともに、より多くの点を考慮した上で本研究に連なる次期計画をたてていくことができると考えられる。
超重水素核の鏡映核探索については、測定の上で重要となるMUST2を用いたE748実験に参加し、本実験に必要となると考えられる新しい解析手法を試すことができた。これにより、実験後すみやかに解析に着手できると考えられる。また、実験を行う上で重要な実験装置である理化学研究所の液体水素表的についても、従来用いられていた10 mm程度の厚さではなく、標的の容器をの試作や液化のテストを繰り返すことで、実験に必要な1 mm程度の厚さでの操作を可能にした。
以上のことから、二つの研究テーマについておおむね順調に進展んしていると評価する。

今後の研究の推進方策

16Cの実験に関しては、必要な解析を終えた上で16Cと15Cの結果それぞれに対して投稿論文の執筆を予定している。必要な解析としては、主な実験結果である4He崩壊した共鳴状態について、一・二中性子崩壊に対する分岐比を求めることである。実際には、中性子崩壊に対してはあらわなピークにはなっていため、分岐比の上限値をもとめることになる。
超重水素核の鏡映核探索については、2018年の上半期にGANILで実験のビームタイムが承認されて、実験を行うことを期待している。そのために、理化学研究所の液体水素標的をフランスに輸送する準備を進める。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] LPC Caen(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      LPC Caen
  • [雑誌論文] Shell evolution beyond Z = 28 and N = 50: Spectroscopy of 81,82,83,84Zn2017

    • 著者名/発表者名
      C. M. Shand, S. Koyama, et al.
    • 雑誌名

      Physics Letters B

      巻: 773 ページ: 492~497

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.physletb.2017.09.001

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Study of proton- and deuteron-induced spallation reactions on the long-lived fission product 93Zr at 105 MeV/nucleon in inverse kinematics2017

    • 著者名/発表者名
      Kawase Shoichiro, Shunpei Koyama, et al.
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2017 ページ: 093D03

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/ptep/ptx110

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Persistence of the Z=28 Shell Gap Around Ni78: First Spectroscopy of Cu792017

    • 著者名/発表者名
      L. Olivier, S. Koyama, et al.
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 119 ページ: 192501

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.119.192501

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Background estimation for multi-charged particle coincidence events with SAMURAI2017

    • 著者名/発表者名
      S. Koyama, H. Otsu for SAMURAI08 collaboration
    • 雑誌名

      RIKEN Accelerator Progress Report

      巻: 50 ページ: 179

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Study of cluster states via invariant-mass spectroscopy2017

    • 著者名/発表者名
      S. Koyama
    • 学会等名
      SAMURAI International Collaboration Workshop 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis for multi-charged particle coincidence events with SAMURAI2017

    • 著者名/発表者名
      S. Koyama
    • 学会等名
      SAMURAI International Collaboration Workshop 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Study of cluster structure in 16C2017

    • 著者名/発表者名
      S. Koyama
    • 学会等名
      Workshop on Nuclear Cluster Physics 2017
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi