研究実績の概要 |
本研究では、不安定核のクラスター構造を実験的に探索する。現在、これに関する二つの研究(1)不変質量分光による中性子過剰核のクラスター構造の探索、(2)欠損質量分光による超重水素鏡映核の探索、を行っている。 (1)に関しては、多粒子測定スペクトロメータSAMURAIを用いた16Cの不変質量分光実験の解析をさらに進めた。クラスター構造を探索する上で重要である4He崩壊に加えて、中性子過剰核である16Cからの典型的な崩壊である中性子崩壊チャンネルについても解析した。こうした解析を進めるうちに、16Cから一中性子剥離反応で励起された15Cからの4Heを含む崩壊にも、幅の狭いピークを同定した。この15Cの励起状態は、クラスター構造とは異なる構造を持つ可能性があり、議論を進めている。こうした解析手法や結果について、国際学会で発表した。 (2)では、非束縛である超重水素核(7H,6H,5H)の鏡映核である7C,6B,5Beの探索実験(E738実験)を行う。E738実験と同様に荷電粒子測定器MUST2を使用する、フランスの加速器施設GANILのE748実験に参加した。実験データを持ち帰り、E738実験に備えた解析を進めた。これまでMUST2の解析では、欠損質量分光に必要な反跳の一荷電粒子のみの解析が主であったが、E738実験では、7C等が3Heと多数の陽子に崩壊し、その崩壊片もMUST2で検出されうる。こうした、一イベントに対して複数の荷電粒子がMUST2に入射するイベントのモデルケースとして、E748実験でバックグラウンドとして生成された8Be->4He+4He等のイベントに対して不変質量法の解析を行って既知のピークを同定することで、解析の妥当性を示した。E738実験は2018年の春から夏の間に行われる可能性が高く、実験に用いる理化学研究所の液体水素標的の準備も進めた。
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