研究課題
本研究では、遺伝子導入用ベクターとして優れた特長を有するアデノウイルス(Ad)ベクターを用いて、新生児に適した新規遺伝子治療薬を開発することを目的としている。これまでにAdベクターは新生児マウスにおいても高い遺伝子導入効率を示すものの、わずかにAd タンパク質が発現することで組織障害が誘導されることを明らかとしている。そこで、当研究室で独自に開発した肝臓特異的なmicroRNAであるmiR-122a を利用して、Ad 遺伝子の発現を抑制可能な改良型Adベクター(Ad-E4-122aT)を用いて検討を行うこととした。本年度はまず、血友病Aに対する遺伝子治療を試みた。血友病A患者が欠損している血液凝固第VIII因子(FVIII)は血中半減期が約12時間と短い。そこで、免疫グロブリンGのFc領域との融合によりFVIIIの血中半減期を向上させることで遺伝子治療効果が向上すると期待し、Fc融合FVIII(FVIIIFc)を発現するAd-E4-122aTを血友病Aモデル新生児マウスへと投与した。しかしながら、FVIIIFc発現Ad-E4-122aT投与群と、Fc領域を融合していないFVIIIを発現するAd-E4-122aT投与群で血中FVIII活性値は同程度であり、治療効果は増強されなかった。次に、血友病B胎児に対する治療を試みた。血友病B患者が欠損している血液凝固第IX因子(FIX)にFc領域を融合することでFIXに胎盤透過性を付与し、母体から胎児へとFIXを送達可能と考えた。そこで、Fc融合FIX(FIXFc)を発現するAd-E4-122aTを血友病Bモデル妊娠マウスへと投与し、生後0日の新生児マウス血中におけるFIX濃度を測定した。その結果、治療域の血中FIX濃度が新生児マウスから検出され、母体にて発現させたFIXFcにより、血友病B胎児を治療することに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Biol. Pharm. Bull.
巻: 41(7) ページ: 1089-1095
10.1248/bpb.b18-00222.
Sci Rep.
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41598-018-30947-z