研究課題/領域番号 |
16J04761
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
阿部 拓 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | Hessenberg多様体 / 局所完全交差 / 構造層 / コホモロジー |
研究実績の概要 |
平成29年度は,regular Hessenberg多様体の代数幾何学的な性質について,復旦大学の曽昊智氏と東京工業大学の藤田直樹氏と共同研究を行った.我々はHessenberg多様体を旗多様体上のベクトル束への切断の零点集合として捉え直し,Hessenberg空間についてのある(非常にマイルドな)仮定のもとで,regular Hessenberg多様体が局所完全交差であることを示した.正則元から定まるHessenberg多様体の場合には,ベクトル束への切断の零点集合が期待される余次元を持つということは知られていたので,切断から定まるゼロスキームが被約であることを証明し,その帰結としてこの結果を得た.また,旗多様体におけるregular Hessenberg多様体の包含列の性質を調べ,regular Hessenberg多様体の構造層の高次コホモロジーが消滅していることを証明した. これらの結果の応用として,regular Hessenberg多様体のPicard群と2次の特異コホモロジー群が同型であることや,旗多様体のK理論において正則なヘッセンバーグ多様体が表す類がリー環の正則元の取り方によらないことなどが得られた. また,regular Hessenberg多様体の族についても研究を行い,閉点上のスキーム論的ファイバーが被約であることを証明し,これにより,regular Hessenberg多様体は常にregular nilpotent Hessenberg多様体への平坦退化を持つことを示した.応用として,旗多様体の射影埋め込みの下でのregular Hessenberg多様体の埋め込みの次数をリー環の言葉で計算した.埋め込み次数を記述するこの公式は阿部拓郎氏,堀口達也氏,枡田幹也氏,村井聡氏,佐藤敬志氏らによるregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環の表示の研究(arXiv:1611.00269)に現れたものの定数倍である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局所完全交差性については,A型では,regular nilpotent Hessenberg多様体について,以前応募者がFederico Galetto氏,Lauren DeDieu氏,原田芽ぐみ氏と行った共同研究で得られていたが,今回の研究はそれを任意のリー型かつ任意の正則元の場合へ大きく一般化できた.さらに,構造層の高次コホモロジーの消滅は,これまでのHessenberg多様体の研究では知られていなかったので新しい研究であり,今後の研究へ繋がるものと期待される.以上を総合して,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,Hessenberg多様体上の非常に豊富な直線のコホモロジーの消滅や,Hessenberg多様体がいつFano多様体になるかといった代数幾何学的な性質を調べていきたい.また,これらの状況を詳細に調べることで,Hessenberg多様体上の完全可積分系の存在に迫りたい.
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