研究課題/領域番号 |
16J04817
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
花木 祐輔 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | PKC / Aplysiatoxin / 細胞増殖抑制 |
研究実績の概要 |
本研究は,当研究室で開発された抗がん剤シード・10-Me-aplog-1のがん細胞増殖抑制機構を明らかにすることを目的としている.これまでに,aplog感受性がん細胞株の一つであるA549細胞に対する増殖抑制活性はPKCαを介してもたらされることが明らかになっているめ,本年度はPKCαの下流のシグナル伝達を調べることにした.フローサイトメトリーを用いた細胞周期解析によって,10-Me-aplog-1はPKCαの活性化を介してA549の細胞周期をG1期およびG2期で停止させることが判明した.そこで,抗体アレイを用いて細胞周期に関わるタンパク質のリン酸化状態を解析したところ,数種のタンパク質のリン酸化状態がPKCα依存的に変化することが明らかになった.現在,これらのタンパク質の細胞増殖抑制における役割を調べている. PKC以外のタンパク質が増殖抑制に関与している可能性も考えられたため,10-Me-aplog-1をビオチンプローブ化して標的分子探索を行った.A549細胞の破砕液から10-Me-aplog-1結合タンパク質を複数見いだしたが,細胞増殖抑制に関わるタンパク質の同定には至っていない.一方で,ビオチンリンカーの導入部位である10-Me-aplog-1の側鎖における構造活性相関を調べたところ,側鎖末端のフェノール基を取り除いた誘導体が顕著な発がん促進性および炎症性を示した.したがって,10-Me-aplog-1を抗がん剤として構造最適化するうえで,側鎖フェノール基は必須であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PKCαの下流でリン酸化状態が変化するタンパク質を見いだし,細胞増殖抑制機構を解明するための手がかりを得た.また,10-Me-aplog-1をビオチンプローブ化することによって,A549細胞の破砕液からPKC以外の結合タンパク質を複数同定した.さらに,10-Me-aplog-1の側鎖における構造活性相関研究によって,側鎖フェノール基が発がん促進性および炎症性を低減させることを見いだし,本化合物を抗がん剤として構造最適化するうえで重要な知見を得た.以上より,本年度の目標をほぼ達成したと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現時点で最も重要な標的分子であると考えられるPKCαを介した細胞増殖抑制機構を,トランスクリプトームならびにリン酸化タンパク質の解析によって明らかにする.A549以外のaplog類に感受性の高い細胞株においても同様の機構が働いていることを確認する.また,移植担がんマウスを用いて,10-Me-aplog-1のin vivoにおける細胞増殖抑制機構を検証する.
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