研究課題/領域番号 |
16J04820
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹之内 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 光制御 / 細胞膜タンパク質 / 細胞内輸送 / アレスチン / GPCR |
研究実績の概要 |
我々は心筋細胞の拍動を制御するべく、拍動抑制型プローブの機能評価を中心に研究を推進した。心筋細胞では、アドレナリン受容体(ADR)によってシグナルが活性化され、拍動が促進される。シグナルの活性化後、ADRはArrestinによって細胞内へ誘導されるが、細胞膜へとリサイクリングされ、再度シグナルを活性化する。したがって、心筋細胞の拍動を抑制するためには、ADRの細胞内での輸送経路を制御する必要がある。 β2アドレナリン受容体(ADRB2)とArrestinのそれぞれにCIBおよびCRYを結合した融合タンパク質を作製した。上記の融合タンパク質を安定して発現するHEK293細胞株(HEK293opt)を作製した。顕微鏡下においてHEK293optに440nmレーザーを用いて光照射すると、時間経過とともにADRB2が細胞内へ移行することを確認した。 次に、HEK293optをリソソーム染色色素で染色し、共焦点顕微鏡下で120分間光照射した結果、エンドサイトーシスしたADRB2がリソソームと共局在することが判明した。この結果は、Arrestinとの相互作用のみでADRB2がリソソーム輸送まで輸送されることを示している。 次に、照射終了後、暗闇条件下においてADRB2が細胞膜へリサイクリングされるか検証した。細胞表面上のADRB2CIBをELISA assayによって定量した結果、光照射終了後、ADRB2が細胞膜上にリサイクリングされることが判明した。本検討において、ADRB2とArrestinの相互作用を光で制御することで、細胞内輸送が自在に制御できることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光による生命現象の人工的な制御は、本来の生命現象を可能な限り模倣することが求められる。平成28年度の成果は、拍動抑制型のプローブの機能評価を行っており、アドレナリン受容体の細胞内輸送をリガンド刺激の場合と同様のメカニズムで誘導できることを証明した。研究は順調に進展しており、今後は今まで以上に研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
今後、拍動促進型プローブの開発及び機能評価を迅速に行う。培養細胞を用いて、cAMP産生やカルシウム流入など下流シグナルが光で制御できることを確認する。 また、拍動促進型および抑制型プローブを心筋細胞iCellに発現させ、拍動の促進と抑制が制御可能か検討する。開発したプローブを用いて、心筋細胞上で不整脈状態を人工的に生み出し、細胞内の毒性がどのように蓄積されていくか検証する。
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