研究課題/領域番号 |
16J05082
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
開出 雄介 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 国家責任法 / 権利侵害 / 損害 / 対世的義務 / 当事国間対世義務 / 伝統的責任法 / 従来の責任法 / クロフォード |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の国家責任法を、理論的に再構築しようとするものである。本年度は、現代の国家責任法を理論的に再構築しようとするとき、どのような作業が必要であるのか、検討を行った。 現代の国家責任法を理論的にどのように構築するかを巡っては、現在、様々な学説が林立していると言って良いところであるが、そのなかで特に注目すべき議論を展開している論者として、J・クロフォードとB・シュテルンがいる。両者は、国家責任法をどのように理論的に構築するかについて、根本的に異なる議論を提出している。 本研究で注目するのは、両者の現代国家責任法の理論構築にかかる明白な違いでだけではなく、両者の議論構成にある共通点である。両者は、伝統的責任法の理論構成についての一定の理解をもとにして、現代の国家責任法の理論構成を行おうとしているという議論構成を実は共有している。また、両者ともにおいて、伝統的責任法とは、おおよそ19世紀の終わり頃から20世紀の初頭にかけて、イタリアの国際法学者D・アンチロッチによって理論化されたものであるとの理解も、共有されている。両者は、結局のところアンチロッチを理論的にどのように理解するか見解を異にするが故に、現代の国家責任法の理論構築についても、意見を異にしているのである。 ここに議論の混乱の源泉がある。一定のアンチロッチ理解を基にして議論が行われているいま、まずアンチロッチ理解についてまず議論がされず、各々が異なるアンチロッチ理解を基に議論を展開すれば、それは生産的な議論とはなり得ないだろう。現代国家責任法の理論構成について論じるためには、アンチロッチが国家責任法をどのように構築したのか、まず議論されなければならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
繰り返し述べるとおり、本研究の目的は、現代国家責任法を最も説得力ある形で理論的に構築することである。当初の研究計画からかかる研究の目的は全く変わっていないが、この目的に至る過程については、当初の研究計画に記した予定に完全に沿っているという訳ではない。当初の計画では、初年度である今年度は国家責任法の理論構成の学説史的研究を行う予定であったが、今年度はむしろ現代の国家責任法の理論構成を巡る議論を検討した。 このように当初の計画と全く同様に研究が進行しているわけではないが、計画より研究が遅れているわけではかならずしもない。むしろ、現代国家責任法を巡る学説を詳しく検討することで、当初の計画以上に実りを得ることができたように思われる。そのため、このように自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画通り、本格的に歴史的検討に踏み込んでいきたい。
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