研究課題/領域番号 |
16J05082
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
開出 雄介 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 従来の責任法 / 外交的保護 / 損害払拭 / 合法性コントロール / 契約保護 / 基本権的権利 |
研究実績の概要 |
外交的保護の法的性質、機能について、学説と常設国際司法裁判所(PCIJ)、国際司法裁判所(ICJ)の諸判決でとらえ方が異なるのではないか。前者は外交的保護を個人の物質的・精神的損害(あるいはそれを内実とする権利侵害)が国家の損害(権利侵害)であるから行われるものとし、外交的保護の法的性質、機能について、損害払拭、ひいては国家の基本権(的権利)を保護するものであるとしていたのに対して、後者は外交的保護の法的性質、機能について、国家間で結ばれた契約あるいは約束を保護するものであると考えていたのではないか。本研究は、かかる外交的保護の法的性質、機能にかかる学説と判例のズレを手がかりに、国家責任法全体を見直そうとするものであった。 現在の国家責任法論は、これまでに妥当してきた責任法が損害払拭機能を有する(違法行為によって物質的・精神的損害を被った国が責任追及を行うことができるとするもの)であることを前提に、それにどのような責任法を付け加え、現在の責任法をどのように構想するべきか議論を戦わしている(公益保護の責任法論、合法性コントロールの責任法論が唱えられている)。このような現在の国家責任法論の現状に鑑みると、以上のような本研究は国家責任法論全体の見直しを迫るようなものとなると考えられる。 つまり、現状、外交的保護を通じて国家責任法が形成されてきたと言われ、外交的保護が損害払拭機能を有するという理解は従来の責任法が損害払拭をその機能としていたということと無理なく整合していた。しかし、本研究の結果外交的保護が損害払拭機能ではなく契約保護機能を有していたということとなれば、従来の責任法が損害払拭であったとの理解そのものが疑問に付され、ひいては国家責任法の構想も全く異なった光で照らされることとなるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、一年目を目処に外交的保護について扱った修士論文を書き直し、出版して学界の批判を仰ぐ予定であったが、一年目にレビュー論文(外交的保護がなぜ検討されなければならないか、また、外交的保護の法的性質、機能が異なるという結論によって国家責任法論にどのような影響があるか検討するために、現在なされている国家責任法論を整理したもの)を執筆する機会があったことがあり、この作業は本年度までずれ込むことになった。しかし、そのおかげで、一年目に執筆、公表したレビュー論文をさらにブラッシュアップして取り込んだ上で修士論文をリライトすることができた。これによって、今後の研究の確かな礎となるものを構築できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は博士論文の執筆に邁進していきたい。
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