研究課題
本年度は、昨年度収集したサンプルを基に分類学的再検討と分子系統解析の準備を進めた。また、国内研究機関の標本調査により、Platylabini族の未記載属の1つについて宿主を特定することができた。この未記載属は形態形質により、Platylabus属に近縁であることがわかっている。また、その宿主はカギバガ科に含まれる種であった。Platylabus属の一部にもカギバガ科を宿主として利用するものが知られており、それらの種との系統関係を明らかにする必要がある。この未記載属の宿主は葉を綴り合せてシェルターを形成することが明らかになった。寄生者の雌はシェルターに侵入して産卵すると考えられ、他の分類群で隠蔽的な宿主に対する適応と考えられている形態形質がこの未記載属においても複数見出された。Platylabini族が含まれるヒメバチ亜科においては、その種数の多さに反して宿主に対する形態的な適応が明らかになっているものはほとんどいない。今回の未記載属に関する発見については、国際食虫性昆虫学会議で発表した。Platylabus属の1種について、日本から記録された標本が所在不明であったが、標本調査の過程で見出すことができた。その結果、日本産種の別の種と同物異名関係であることが判明した。また、未記載属を含む日本産Platylabini族の全属について、先行研究における属の定義を再検討した。この過程でPlatylabini族の共有派生形質を新たに見出し、それが宿主に寄生するステージと関連していることを考察した。この結果について日本昆虫学会で発表した。
3: やや遅れている
本年度の研究を通じて、日本産Platylabini族の属の定義を再検討し、未記載属の分類学的な位置も把握することができた。また、属レベルで宿主が判明していなかった種の宿主が解明されるなど、重要な進捗が見られた。しかし、種レベルの記載で必要な比較標本の一部について、海外研究機関の調査を行う予定であったが、先方との予定が合わず延期となってしまった。これにより、記載論文の執筆が遅れており、全体としてやや遅れていると判断した。
次年度はPlatylabini族の系統関係推定と分類学的再検討を完成させ、宿主利用の転換について解析を進める。また、今年度行くことのできなかったドイツでの標本調査を行う。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
昆蟲. ニューシリーズ
巻: 20 ページ: 202-204
Insecta matsumurana. New series : journal of the Faculty of Agriculture Hokkaido University, series entomology
巻: 73 ページ: 1-37