研究課題/領域番号 |
16J05198
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋保 亮太 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | チームワーク / 暗黙の協調 / 共有メンタルモデル / チームの振り返り |
研究実績の概要 |
本研究では,チーム活動の効率化という観点から,メンバーの心理的側面とチーム内で行われる行動的側面の双方がチーム・パフォーマンスへ及ぼす影響について統合的に検討を加えていくことを目的にしている。平成28年度は,主に阿吽の呼吸で行われる円滑な連携である暗黙の協調の実現過程とその継承に着目し,チームメンバーの入れ替わりに伴って暗黙の協調がどのように変容するのかを実験的に検証した。その際,メンバーがメンタルモデルを共有することと,チーム全体で活動を振り返ることが,暗黙の協調の実現に対してどのような役割を果たしているのかについて具体的な検討を加えた。 一連の研究の結果から,チーム全体で活動を振り返ることによって暗黙の協調が徐々に実現されていくことが確かめられた。また,初期メンバーで構成されたチームと比較して,メンバーが入れ替わった後のチームの方が暗黙の協調を実現できるようになる可能性が示唆された。加えて,暗黙の協調は,メンバーが入れ替わった後も維持・継承される傾向にあることが明らかになった。しかしながら,暗黙の協調の実現における共有メンタルモデルの影響は本研究では見られなかった。 本研究は,これまで実施されてこなかった暗黙の協調について実証的な検討を加えることに成功した。これにより,チーム活動の効率化に関する研究や議論の発展がもたらされると考えられる。また,チームのマネジメントの観点から考えると,チーム活動の無駄を把握するための有用な示唆を与え得るものとなるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載したように,平成28年度は,主に暗黙の協調の実現過程とその継承に着目し,チームメンバーの入れ替わりに伴って暗黙の協調がどのように変容するのかを実験的に検証してきた。すなわち,実験室実験における暗黙の協調の実現を通して,チームワークの継承の有無について検討を行ってきた。これにより,心理的側面 (e.g., 共有メンタルモデル)と行動的側面 (e.g., チームの振り返り)の統合的検討のみならず,チームワークの時間的なダイナミズムの発展に関して議論と検証を加えることに成功した。 これらの成果は,国内の学会などにおいて公表された。加えて,これらに関連する業績および本研究を含めた一連の研究成果をまとめて,学位論文を作成した。所属大学において所定の審査を受けた結果,博士 (心理学)の学位の取得にたどり着くことができた。 しかしながら,これら一連の研究は,共有メンタルモデルおよびチームの振り返りのポジティブな効果について着目して検証を加えたものである。従って,共有メンタルモデルおよびチームの振り返りの2つがチーム・パフォーマンスにネガティブな効果をもたらす可能性については,未だ十分に議論ができていない。これまでの研究成果を踏まえつつ,今後の研究では,暗黙の協調の実現を阻害する心理的要因・行動的要因や,暗黙の協調がチームにネガティブな結果をもたらす状況の解明に向けて詳細に検討していく必要があるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】に記載したように,これまでの研究では,共有メンタルモデルおよびチームの振り返りがチーム・パフォーマンスへネガティブな効果をもたらす可能性について十分に議論ができていない。そこで,今後の研究では,共有メンタルモデルとチームの振り返りがチーム・パフォーマンスへネガティブな効果をもたらすのはどのような状況なのか,これまでの研究パラダイムと研究知見を応用しつつ,更なる検討を加えていく予定である。 また,平成28年度に実施した研究の発展として,チームワークの学習と継承に関する実験室実験を計画している。現在,その準備段階として予備実験を行っている。今後は,この予備実験結果を基に実験デザインのブラッシュアップを行い,実験参加者の募集と本実験を並行して実施する。特に,チームの振り返りと共有メンタルモデルが暗黙の協調の実現に結びつく具体的過程についてのより詳細な議論・検証を加える予定である。
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