研究課題/領域番号 |
16J05261
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊 雨峰 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | N-混乱ポルフィリン / 金属有機構造体 / ジルコニウム / 近赤外光吸収・発光 |
研究実績の概要 |
本年度は、N-混乱ポルフィリン(NCP)を基盤とした金属有機構造体(NCP-MOF-525)の合成およびその構造解析、安定性、光物性について評価した。水熱法により得られたサンプルNCP-MOF-525は立方体状結晶形を有しており、面心立方体構造であることが明らかとなった。MOF中のジルコニウムイオンの形式電荷数は+4価であり、カルボキシ基が直接配位していることがわかった。安定性にあたって、汎用有機溶媒中において化学的に安定であり、水溶液中においてもpH10以下の幅広い領域で極めて安定であることが明らかとなった。また、熱的にも、NCP-MOF-525は400度まで安定である。NCP-MOF-525の光学特性について検討したところ、吸収スペクトルからNCP分子の特有なSoret帯およびQ帯を有する可視、近赤外光捕集能を示し、900nm付近に近赤外発光スペクトルが観察された。したがって、近赤外発光性MOFとして機能することが明らかとなった。 また、本研究期間中において、更なる機能化を指向したアニオン膜透過輸送キャリヤー分子の開発とそのアニオン選択性に関する研究をイギリスのサウサンプトン大学にて実施した。嵩高いかご状結合サイトを有するチオールニョウソキャリヤー分子を合成し、リン脂質小胞を用い細胞内輸送実験において、生理条件で選択的に塩化物イオンが捕捉、リン脂質二重層を透過、輸送に成功したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は一年度目の計画であるN-混乱ポルフィリンを基体としたNCP-MOF-525の合成およびその構造解析、物性評価などを成し遂げた。さらに、ポルフィリン(TPP)および混乱ピロール窒素部位をN-メチル化したMeNCP誘導体を用いたMOFとの比較検討を行い、NCP-MOFは似たような構造を有することがわかった。また、来年度の主な計画であるNCP金属錯体をベースとしたMOFを用いた高安定性不均一触媒の創製に向けて重要な発見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はNCP金属錯体を基体としたM-NCP-MOFの合成およびその触媒展開を目指す。具体的には、既に触媒能を評価したNCP金属錯体Mn(Ⅲ)、Rh(Ⅳ)等を構成要素とするMOFの合成および構造解析の確認を行う。ついで、実際にアルケンのシクロプロパン化反応に参加させ、均一触媒を使う場合と比べて触媒効率(ターンオーバー数)がどれほど変化したかについて評価する。
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