研究課題/領域番号 |
16J05261
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊 雨峰 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | N-混乱ポルフィリン / 金属有機構造体(MOF) / ジルコニウム / ハイブリッドMOF / 近赤外光吸収・発光 / 光触媒 |
研究実績の概要 |
本年度は一年目の結果を踏まえて、ポルフィリン分子およびN-混乱異性体の18π共役構造の類似性に着目し、新たなハイブリッド型MOFの合成および構造解析、光触媒能について検討を行った。 トポロジー構造を制御したハイブリッド型MOFの合成にあたり、シード結晶合成法を駆使することでN-混乱型ポルフィリンMOF(NCP-MOF)を核としたコアシェル型のMOF(Hybrid-MOF-N)、通常のポルフィリンMOF(TPP-MOF)を核としたHybrid-MOF-Tを得ることに成功した。 得られた二種類のハイブリッド型MOFはシードMOFの同トポロジー構造(ftw)を有することを粉末X線回折により確認した。また、サンプルの固体吸収スペクトルを測定したところ、TPPおよびNCPユニットが任意の割合で存在することが明らかとなった。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いてハイブリッドMOFの形状および発光挙動について観察したところ、Hybrid-MOF-Nにおいては、外側のシェル部位にTPPユニットが存在するため、光励起によりTPP由来の赤色の蛍光が観察され、Hybrid-MOF-TではNCPユニットがシェル部位に存在するため、MOF粒子からの発光強度が著しく減少することが観測された。この現象については、分光測定によって、励起されたNCPの特徴的な近赤外発光が観測されることが明らかとなり、時間分解スペクトル解析によりその挙動を明らかとすることが出来た。また、可視光から近赤外光捕集機能を利用して、光増感一重項酸素発生能について検討し、中程度の量子収率および著しい光安定性を有することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度の成果に基づいて、更にシード結晶合成法によるポルフィリンおよびN-混乱ポルフィリンの二種類の配位子ユニットをコアシェル状に配列させたハイブリッド型MOFの合成に成功した。共焦点レーザー顕微鏡観察等の各種分光測定によって核とシェルの構成色素の違いによる発光挙動の違いについて明らかとした。これはNCPユニット由来の近赤外光吸収・発光能を付与できたとともに、TPPおよびNCPユニットによるパンクロマティックな光捕集MOFとして機能することが明らかとなった。さらに一重酸素光増感能を有する光触媒としての応用を示唆する結果が得られ、計画研究において十分な進展が見られたと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
計画研究において最終年度では、前年度の成果で得られたハイブリッド型MOFを用いた光触媒への応用を検討する予定である。具体的には、照射波長依存型、光増感一重項酸素発生による位置選択的な基質酸化反応へ適応する。また、金属イオン上での触媒反応活性の発現を期待して、ポスト金属錯形成アプローチによるNCP-MOF(TPP-MOF)の金属錯化能について検討し、これまでのNCP金属錯体の合成化学の知見をもとに、コバルト、鉄等の酸化還元活性な金属NCP錯体ユニットを含むMOF触媒の創製を目指す。
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