研究課題/領域番号 |
16J05264
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐々木 拓弥 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
キーワード | 神経科学 / 畜産学 / GnRHパルスジェネレーター / KNDyニューロン / キスペプチン / ニューロキニンB / ダイノルフィンA / セロトニン |
研究実績の概要 |
視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌は、卵巣における卵胞発育制御に必要不可欠である。視床下部弓状核に局在するKNDyニューロンはキスペプチン、ニューロキニンB、ダイノルフィンAの3つの神経ペプチドを含有しており、GnRHパルス発生中枢(GnRHパルスジェネレーター)であることが示唆されている。GnRHパルスジェネレーターの活動はニューロキニンBにより促進され、ダイノルフィンAによって抑制されるが、詳細なメカニズムは不明である。本研究の目的は、反芻家畜の視床下部におけるNKB受容体およびDyn受容体の局在を解明し、GnRHパルスジェネレーターの活動制御におけるNKBおよびDynの役割を明らかにすることである。 今年度は、GnRH分泌に影響をおよぼすことが過去に報告されている因子としてセロトニンに着目した。GnRHパルスジェネレーターの活動をリアルタイムで観察できる多ニューロン発火活動(MUA)記録法を用い、卵巣除去メスシバヤギにセロトニンを脳室内投与してGnRHパルスジェネレーターの活動におよぼす影響を評価した。黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌に同期して発生する一過性のMUAの上昇(MUAボレー)をGnRHパルスジェネレーター活動の指標として解析した。 低用量および高用量のセロトニンをヤギ脳室内に投与すると、セロトニン投与直後にMUAボレーが誘起された。溶媒の投与はMUAボレーを誘起しなかった。セロトニンおよび溶媒投与から次のMUAボレーが発生するまでの時間(潜時)を各群で比較したところ、セロトニンの投与は用量依存性に潜時を短縮した。 以上の結果より、セロトニンはGnRHパルスジェネレーターの活動を促進し、パルス状のGnRH/LH分泌を刺激する作用を有することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、ニューロキニンB受容体およびダイノルフィンA受容体を発現する細胞をin situ hybridizationにより可視化した後レーザーマイクロダイセクションにより単離し、これらの細胞における遺伝子発現をRT-PCRにより解析する予定であった。しかし、レーザーマイクロダイセクションにより単離した細胞からのRNA抽出およびcDNA合成のための条件設定に相当の時間を要することが判明したため、以下のように推進方策を変更した。まず、GnRHパルスジェネレーターの活動をリアルタイムで観察できる多ニューロン発火活動(MUA)記録法を用い、GnRHパルスジェネレーターの活動に影響をおよぼす神経伝達物質を同定し、次に、同定された神経伝達物質とニューロキニンBおよびダイノルフィンAとの相互作用メカニズムを解析することをめざした。 上記の研究方策に従い、GnRHパルスジェネレーターの活動に影響をおよぼす因子としてセロトニンを同定した。次年度には、GnRHパルスジェネレーター活動の新たな制御因子として同定したセロトニンと、ニューロキニンBおよびダイノルフィンAとの相互作用メカニズムを解明する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
シバヤギKNDyニューロンにおけるセロトニン受容体の発現解析を行うとともに、KNDyニューロンに投射するセロトニンニューロンにおけるニューロキニンB受容体およびダイノルフィンA受容体の発現解析を行う。さらに、所属研究グループが保有するラットKNDyニューロンにおけるトランスクリプトーム解析の結果を用いて他の候補因子を選抜し、その候補因子がヤギのGnRHパルスジェネレーターの活動におよぼす影響を検討する。 また、ニューロキニンBおよびダイノルフィンAによるキスペプチン分泌制御メカニズム解明に向けて、当初の予定通り視床下部弓状核からキスペプチンを採取するための in vivo マイクロダイアリシスおよびキスペプチンを定量するための測定系の立ち上げを行う。
|