アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) の胎児移行性にorganic anion transporter (OAT) 4が与える影響の評価とOAT4発現マーカーの探索を目的とし、OAT4を介した薬物輸送と胎盤特異的なOAT4の発現機構について検討した。ARBは、胎盤を透過して胎児腎に到達することでヒトに限定的な胎児毒性を示す。過去に、ARBであるolmesartanの胎盤関門胎児側基底細胞膜における輸送へのOAT4の関与について報告している。また、chlorideはOAT4を介した交換輸送の駆動力となることが提唱されることから、今回は、5種のARB (candesartan、irbesartan、losartan、telmisartan、valsartan)について、OAT4発現細胞による取り込みを、細胞外chloride非存在下で定量した。少なくともlosartan、candesartan、valsartanについては、OATを介した細胞内取り込みが示された。抗ヒスタミン薬cetirizineについてもOAT4を介した輸送方向性を解析し、OAT4がラセミ体のcetirizineのうち、levocetirizineのみを選択的に細胞内に取り込むことを示唆する結果を得た。OAT4の転写制御領域についての解析では、胎盤および腎臓由来OAT4 遺伝子の転写開始点が異なることを同定した。さらに、尿細管上皮および胎盤栄養膜モデル細胞における転写活性の比較から、胎盤におけるOAT4発現を司るプロモーター領域を明らにした。胎盤OAT4の5’隣接領域変異解析から、転写因子AP-2結合配列を含む領域が胎盤でのOAT4 基礎転写活性に必須の領域であることが示された。本研究より、ヒト胎児への薬物移行予測の発展に寄与する結果を得た。
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