研究課題
生物の発生過程に現れるような薄い構造物の力学的特性を明らかにすることを目的としている。特に最終年度にあたる今年度は、主に2つのテーマに焦点を絞った。1つ目はねじれを伴う飛び移り座屈、2つ目は結び目の力学である。薄い構造が大変形を起こす基本的なモードの1つとして飛び移り座屈と呼ばれる現象がある。飛び移り座屈は、たわんだ(オイラー座屈させた)板を凹ませ平たくしようとすると、たわんだ方向が音を立てて逆転する現象のことをいう。私は境界条件によって駆動された3次元的な飛び移り座屈の基本的な性質を明らかにした。細長いリボン状の板を半円をなすように拘束して、両端を同じ方向に回転させる。するとリボンは初めに面外変形するが跳ね返り、音を立て、初めの状態と表裏反転しているが同じ形に戻る。この現象の変化が起こる条件を実験と数値計算と理論を組み合わせて明らかにした。こちらの研究成果は、アメリカ物理学会のPhysical Review Letters誌で論文として出版された。棒状構造物同士が力を及ぼしあう基本的なかたちに結び目がある。結び目が人類史に現れたのは、古代エジプトにまで遡る。貨物輸送から高分子の絡み合いに至るまで非常に大きな長さスケールに渡って結び目は見られるが、その結び方と荷重の間の力学的性質などはあまり明らかになっていない。そこで私はスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のPedo Reis教授の研究グループに3ヶ月滞在し、結び目の接触領域の3次元構造を実験データの画像解析によって明らかにした。結び目の接触構造とその力学特性を完全に明らかにするには至らなかったが、接触構造は最新の実験装置を用いたものであり、今後の結び目研究の重要な一歩であると考えている。本研究成果に関して、EPFLに所属する共著者2名がそれぞれアメリカ物理学会において口頭発表を行った。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
Physical Review Letters
巻: 122 ページ: 114301(1)-(5)
10.1103/PhysRevLett.122.114301
EPL (Europhysics Letters)
巻: 123 ページ: 14001(p1)-(p7)
10.1209/0295-5075/123/14001