研究課題/領域番号 |
16J05324
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
岡部 拓也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ポルフィセン / 非平面構造 / 二量体 / 有機太陽電池 / 有機半導体 / n型半導体 |
研究実績の概要 |
これまでにポルフィセンの位置選択的ヨウ素化反応の開発に成功しており,得られた3-ヨードポルフィセンを足がかりとしたカップリング反応によって,m-フェニレン (DPc-mP) 及びチエニレン (DPc-T) 連結ポルフィセン二量体を合成した.DPc-mPおよびDPc-Tの単結晶X線構造解析に成功した.DPc-mPは二つのポルフィセンユニット間の二面角が103度とほぼ直交した非平面構造を示した.一方,DPc-Tはチエニレンリンカーがポルフィセンに対して直交することで,二つのポルフィセンユニットが共平面構造を示した. 次に一般的なp型材料であるP3HTとポルフィセン単量体 (THPc) または 二量体の混合膜を作製し,その電荷移動度を空間電荷制限電流 (SCLC) 法を用いて測定した.その結果,P3HT:THPc混合膜は正孔移動度 1.6× 10-4 cm2 V-1 s-1であったが,電子移動度を示さなかった.一方でP3HT:DPc-mPでは正孔移動度 3.7 × 10-4 ,電子移動度 0.26 × 10-4 cm2 V-1 s-1,P3HT:DPc-Tでは正孔移動度3.7 × 10-4,電子移動度 0.027 × 10-4 cm2 V-1 s-1であり,DPc-mPの電子移動度はDPc-Tの約10倍高い値を示した.これは非平面構造のDPc-mPが混合膜中で三次元的な電子輸送経路を構築したと推測される.これらの混合膜をOPVとして評価したところ,P3HT:DPc-mPおよびP3HT:DPc-Tにおいておよそ0.1%のエネルギー変換効率を示し,これはポルフィセン単量体とP3HTに比べての2倍以上高い値を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
n型半導体の分子構造と半導体特性との関係性を解明することを本研究の目的として、ポルフィセンを基本骨格とする3次元構造をもつ新たなn型半導体材料を合成し,その半導体特性の測定に成功した. ポルフィセンの単量体ではn型半導体特性を示さないが,ポルフィセン二量体はn型半導体としての電子移動度を示し,太陽電池材料として有望であることを明らかにした.さらに,単結晶X線構造解析より,平面構造を有する分子に比べて,非平面の折れ曲がった構造をもつ分子の方が電子移動度が高いことが判明した. 得られた分子構造と電子移動度の相関が得られており,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,分子の三次元構造によって薄膜のモルフォロジーや結晶性,半導体特性が変化することを明らかにした.次に薄膜モルフォロジーを変える手法として,「親水性/疎水性」の相互作用に注目した. 有機太陽電池の活性層は二種類の有機半導体の混合膜からなり,材料間のミクロな相分離構造は太陽電池特性だけでなく素子の安定性にも大きな影響を与える.これまで相分離構造を制御するために第三成分の導入が数多く報告されているが,一般的に油に馴染みやすい有機材料同士を用いるため,構造が緩和しやすく,添加剤による相分離構造の安定化の寄与が小さい.そこで本研究では,水と油が分離する性質「親水性 / 疎水性」の差に注目し,積極的な相分離挙動の制御を行う.具体的には,親水性と疎水性からなる二成分系へ,その中間の性質をもつ「洗剤のような」両親媒性の添加剤を導入し,三成分混合膜の構造と太陽電池特性について評価する.
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