研究課題
立方晶CeAl2はΓ7二重項を基底状態にとり低温で反強磁性転移を示すが、フォノンにより通常の立方晶では見られないΓ8が2つに分裂した励起状態を取ることが報告されており、励起状態対称性の直接的な観測が一つの課題となっている。我々はこれまでYb3+やCe3+,Sm3+の正方晶および立方晶化合物中の希土類イオンの4f基底状態の決定に内殻光電子スペクトル線二色性が有効であることを報告してきた。そこで、立方晶CeAl2のCe 3d内殻光電子スペクトル線二色性の温度依存性を測定することにより、Ce3+ 4f励起状態対称性の観測を試みた。SPring-8 BL19LXUでCeAl2のCe 3d内殻光電子スペクトル線二色性の温度変化の測定を行ったところ、実験結果の線二色性は低温(6 K)と高温(120 K,200 K)でピーク位置にシフトが見られ、これと同様の傾向を2つの2重項に分裂したΓ8励起状態の一例を仮定したイオンモデルに基づくスペクトル計算の線二色性が示すことが判明した。CeAl2のCe3+ 4f励起状態のより詳細な決定にはフォノンの効果を正確に考慮した計算が必要であり、更なる議論を進めていく必要があるが、通常の立方晶中における結晶場分裂を仮定したイオンモデル計算の線二色性ではCeAl2のCe 3d内殻光電子スペクトル線二色性の温度変化の説明ができず、CeAl2のCe3+ 4f励起状態がΓ8が分裂した特殊な励起状態にあることを改めて示すことに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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