研究課題/領域番号 |
16J05484
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊東 駿也 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 光ナノインプリント / 表面力・共振ずり測定 / モノマー界面粘度 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代ナノ加工技術として注目を集める光ナノインプリントによるサブ15nm成形に向け、ジアクリレートモノマーの界面粘度増加因子の究明とサブ15nm成形体作製の実証に着手している。本年度は、以下3点における成果が得られた。 【1. 表面力・共振ずり測定によるシリカナノ空間中でのジアクリレートモノマーの界面粘度の計測】ナノ空間中の重合性モノマーの粘度がバルク状態に比べて増大することで、光ナノインプリントよるサブ15nm成形において不完全充填欠陥を生じると着想した。ナノ空間中の液体粘度を計測可能な表面力・共振ずり測定によるシリカナノ空間中のジアクリレートモノマーの界面粘度の計測手法を確立した。未修飾のシリカ表面間において親油性モノマーの粘度が6nm以下の空間で増加する現象を明らかにした。また、フルオロアルキル鎖を有する単分子膜を修飾した撥油性・撥水性表面(離型層修飾表面)間では界面粘度が減少することがわかった。固体-液体間の相互作用を現象させることが界面粘度の減少に寄与することを示した。 【2. サブ15nm構造体を有する光ナノインプリント用モールドの作製】サブ15nmパターンを有するシリカモールドを電子線リソグラフィにより直接作製する方法を検討してきた。電子線描画における照射方法と照射量条件、また、サブ15nmパターン作製に適したリソグラフィ工程を検討してきた。その結果、サブ15nmサイズのシリカホールパターンを作製できた。 【3. サブ15nm光ナノインプリントの実証】異なる化学構造を有するジアクリレートモノマーを主剤とした光硬化性組成物、およびフルオロアルキル単分子膜で修飾したモールド表面を使用した。光ナノインプリントにより、直径20, 15, 7nmのピラーパターンの成形を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、光ナノインプリントによるサブ15nm成形に向けたシリカナノ空間中のジアクリレートモノマーの界面粘度の計測、シリカモールドの作製、光ナノインプリントの実証を検討した。表面力・共振ずり測定による未修飾および離型層修飾表面間でのジアクリレートモノマーの界面粘度増加について、表面-液体間相互作用および液体分子間相互作用が影響を及ぼすことを見出した。モールド作製においては陽極酸化アルミナを利用したモールドの作製を試みたが、極薄膜の光硬化性液体に対する光ナノインプリントにおいてモールドの表面粗さが大きいことにより成形が困難であることが実験的に明らかになってきている。そこでサブ15nmパターンを有するシリカモールドを電子線リソグラフィにより直接作製する方法を検討し、その作製に成功した。このモールドを用いた光ナノインプリントによりサブ15nm成形を実証した。作製された成形体の高さからモールドのナノ空間中への光硬化性液体の充填挙動を評価した。充填挙動が光硬化性組成物中の主剤モノマーの化学構造に影響を受けることがわかった。サブ15nm光ナノインプリントでは界面科学の観点だけでなく、界面分子科学の観点から充填挙動が説明できることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について次に示すように研究を遂行する。 1. 離型層表面間でのジアクリレートモノマーの粘度増加現象についてその因子を究明してきた。一方、実際の光ナノインプリントではモールド-基板表面間での粘度増加現象がモールド押し付け後に行うアライメント(モールドの水平方向への移動による位置合わせ)を困難にすると考えている。そこで基板表面に修飾する単分子密着層間でのモノマー界面粘度を明らかにする。密着層-モノマー間の相互作用を減少させ、低界面粘度を実現する組み合わせを検討する。また、異種表面間(離型層-密着層間)での界面粘度を計測することにより、光ナノインプリントの実プロセスにおいて生じうる現象を見出し、その解決に向けた指針を示す。 2. 得られた界面分子科学の知見を基に、極薄膜に対するサブ15nm光ナノインプリント成形を実証する。低界面粘度を示すモノマーと表面の化学組成を選択し、サブ15nm光硬化樹脂成形体を作製する。サブ15nm成形から一桁ナノ(シングルナノ)スケールでのパターニングへと展開し、高分子や機能性材料のナノ-原子スケール研究に貢献する。得られた構造体をエッチングマスクとし、リソグラフィ手法により基板加工を行うことで、機能性薄膜のサブ15nmサイズでのナノデバイス特性評価へと研究を発展させる。
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