新規がんTheranostics用薬剤として、昨年度までにIn-111またはY-90で標識した放射性金属錯体を開発した。薬剤の標的として、がん低酸素領域に特異的に高く発現することが知られている炭酸脱水酵素-IX (CA-IX)を選択し、CA-IXリガンドであるウレイドスルホンアミド(US)を2分子導入したこの薬剤は、CA-IX高発現腫瘍移植モデルマウスを用いた評価において、単光子放出断層撮像(SPECT)イメージングおよびがん治療に対して好ましい結果を示した。今年度では、SPECTと比較して定量性が優れる陽電子断層撮像(PET)イメージングへの応用を計画し、SPECT用核種であるIn-111をPET用核種であるGa-68に置換した[68Ga]US2を設計し、Ga-68よりも半減期が長いGa-67を用いて、CA-IX高発現腫瘍のin vivoイメージングに関する基礎的評価を行った。[67Ga]US2はin vitro細胞結合実験において、CA-IX高発現細胞に対する特異的結合を示した。CA-IX高発現ならびに低発現腫瘍を有するモデルマウスに[67Ga]US2を投与したところ、[67Ga]US2はCA-IX高発現腫瘍に対する高い特異的集積性を示し、炭酸脱水酵素阻害剤の共投与によりその集積は有意に低減した。モデルマウスを用いて[67Ga]US2によるSPECT/CT撮像実験を行ったところ、CA-IX高発現腫瘍を特異的かつ明瞭にイメージングすることに成功した。以上の結果より、[67Ga]US2がCA-IX高発現腫瘍のSPECTイメージングに有用であることが示され、[68Ga]US2を用いることにより、CA-IX高発現腫瘍のPETイメージングを実現し得ることが示唆された。
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