研究課題/領域番号 |
16J05512
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 大貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 安定ラジカル / ESR / SQUID / 高スピン / スピンフラストレーション / 磁性 |
研究実績の概要 |
有機ラジカルは、それが持つ不対電子に由来した磁性や酸化還元特性、光化学特性など特異な物性を有することから機能性材料としての応用が期待される分子群である。しかしながら、一般的に不安定な有機ラジカルを安定化できる骨格は限られており、さらなる発展が求められている。申請者らは前年度に引き続き、ポルフィリノイドの高いラジカル安定化能力に注目して、様々な機能性分子の構築に取り組んでいる。 平成29年度は前年度に見出していた高スピンNi(II)とポルフィリンラジカルとの強い強磁性相互作用に着目した。この系をジポルフィリニルアミニルラジカルに適用したところ、軸配位子がない状態ではアミニルラジカルに由来する二重項(S = 1/2)状態であるのに対し、軸配位子を添加した場合には2つの高スピンNi(II)をラジカルが強磁性的に架橋した六重項状態(S = 5/2)となった。この変化は可逆であり、磁化率にして10倍以上の変化を容易に制御できる。そのため本系は光応答性リンカーなどと組み合わせることにより、機能性MRI増感剤などへの応用も期待できる。 これに加えて、安定な高スピンラジカル種の創製を目指してポルフィリン縮環ベンゼン1,3,5-トリアミニルラジカルを設計・合成したところ、シリカゲルでの分離が可能なほど安定なトリラジカルを得た。SQUIDおよびESRを用いた磁気測定により、J/kB = +125 Kの大きなスピン間相互作用を有する基底高スピン(S = 3/2)化学種であることを明らかにした。また熱励起二重項状態では3つスピンの向きが一意に決まらないスピンフラストレーション状態であることが示唆され、この観点からの調査を現在行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は高スピンNi(II)とポルフィリンラジカルとの強い強磁性相互作用に着目し、この系をジポルフィリニルアミニルラジカルに適用した。結果として二重項(S = 1/2)状態と六重項状態(S = 5/2)を可逆に制御でき、磁化率にして10倍以上の変化を容易に誘起できることを見出した。
またこれに加えて、ポルフィリン縮環ベンゼン1,3,5-トリアミニルラジカルを設計・合成したところ、シリカゲルでの分離が可能なほど安定なトリラジカルを得た。SQUIDおよびESRを用いた磁気測定により、J/kB = +125 Kの大きなスピン間相互作用を有する基底高スピン(S = 3/2)化学種であることを明らかにした。また熱励起二重項状態では3つスピンの向きが一意に決まらないスピンフラストレーション状態であることが示唆され、この観点からの調査を現在行っている。
以上の成果から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにポルフィリノイドの有する高いラジカル安定化能力を利用し、これをポルフィリンの金属配位能や拡張性と組み合わせることで安定な高スピン化学種の合成を達成してきた。今後はさらなる機能性ラジカルの設計・合成を行うとともに、ラジカル以外の不安定化学種の安定化にポルフィリンが有効でないかを検討する。
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