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2016 年度 実績報告書

カルテに記録されていない病名を推定し個別化医療に対応できる診療支援システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 16J05555
研究機関東京大学

研究代表者

香川 璃奈  東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2018-03-31
キーワード医療情報 / phenotyping / 診療支援 / アノテーション / 人工知能 / 機械学習
研究実績の概要

目指す診療支援システムの枠組として、先行研究では考慮されていない、実際の臨床現場の思考と医療行為の流れに基づいたシステムを考案した。具体的には、(1)検査項目の入力に基づいた推薦(2)推薦内容が候補疾患ではなく診断に必要となる検査項目(3)(2)において可能性の高い疾患だけでなく確実に除外すべき鑑別疾患も考慮する、という特徴を持つシステムの提案を行い、東大病院のデータで精度評価を行った。

目指すシステムのもう一つの特徴は、医師がカルテに明示しないが把握している病名をカルテのデータだけに基づいて自動で推定する(e-phenotypingといわれる)ことである。2型糖尿病を対象疾患として手法の開発と実験を行った。同様の手法はアメリカでしか開発されていないが、日米では、用いる医療機器や医薬品、診断ガイドラインが異なるため、既存手法で用いられている特徴量を全て日本のデータで用いることができないこと、利用可能な特徴量を可能な限り用いてe-phenotyping手法を再現しても発表されたものと同等の精度が確保できないことを確認した。そのため、本邦のデータにおいて高い精度を確保するようアルゴリズムを改変した。2型糖尿病以外の疾患についても、2型糖尿病のe-phenotyping手法と同様の手法開発を行った。

また、e-phenotpyingにおいて、医療現場におけるカルテ記載を利用するための基礎的検討を行った。省略された語やどのような文脈での記載かの把握が必要となる文章が存在する割合と、これらを用いるためには対象疾患だけでない幅広い医学知識の利用が必要になると想定されることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目指す診療支援システムの枠組みとして、(A)実際の臨床現場の思考と医療行為の流れに基づいた設計、および(B)医師がカルテに記載しない病名のカルテデータのみに基づく自動推定、の2点が新規な点であるが、双方について研究を遂行し成果を論文発表することができた。
(A)については(1)検査項目の入力に基づいた推薦(2)推薦内容が候補疾患ではなく診断に必要となる検査項目(3)(2)において可能性の高い疾患だけでなく確実に除外すべき鑑別疾患も考慮する、という3点の特徴を持つシステムの提案と評価を行った。
(B)については既存手法の再現と評価を行うのみならず、新規手法の開発も行った。
さらに、上記の研究の過程から、カルテにおいて病名の記載には多様性が高いにも関わらず、システムの評価に必要な正解データのアノテーションプロトコルについて既存のものが曖昧かつ疾患網羅的な定義がない問題を見出した。そのために、正解が一つに定まらない、新しい疾患について研究を行うたびに新規にアノテーションプロトコルを作成する必要がありコストがかかる、という問題がある。これは当初は想定していなかったことである。これについても、解決に必要な技術的課題と、この問題がe-phenotypingの精度に及ぼす影響をまとめ論文発表を行った。
以上のことから、順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

今後は、より幅広い種類(10-20種)の疾患に対して、e-phenotypingの手法開発を行う。すでに作成した慢性疾患のみならず、急性疾患や画像診断や症状が病気の有無の判断に重要な疾患も含めることで、疾患網羅的な手法作成のノウハウを蓄積する。その際には、すでに用いている構造化データに対する機械学習手法の適用のみならず、自然言語処理技術を用いてカルテ記載の情報も新たに利用することで、また画像処理技術も用いることで精度向上を図る。
並行して、カルテにおける病名記載の多様性と、それがe-phenotypingの精度に及ぼす影響についても、定量的な議論を続ける。
以上の結果を、博士論文、さらに学術論文にまとめる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] The impact of “possible patients” on phenotyping algorithms: Electronic phenotype algorithms can only be reproduced by sharing detailed annotation criteria.2017

    • 著者名/発表者名
      Rina Kagawa, Yoshimasa Kawazoe, Emiko Shinohara, Takeshi Imai, Kazuhiko Ohe
    • 雑誌名

      Stud Health Technol Inform

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Development of type 2 diabetes mellitus phenotyping framework using expert knowledge and machine learning approach2016

    • 著者名/発表者名
      Rina Kagawa, Yoshimasa Kawazoe, Yusuke Ida, Emiko Shinohara, Katsuya Tanaka, Takeshi Imai, Kazuhiko Ohe
    • 雑誌名

      Journal of diabetes science and technology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1177/1932296816681584

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 病名を介する検査推薦システム構築に向けた同時オーダーすべき検査項目ペアの自動抽出方法の開発2016

    • 著者名/発表者名
      香川璃奈, 篠原恵美子, 河添悦昌, 今井健, 大江和彦
    • 雑誌名

      医療情報学会誌

      巻: 36 ページ: 113-122

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 高血圧のphenotyping手法の開発および他疾患との比較検討2016

    • 著者名/発表者名
      香川璃奈, 河添悦昌, 篠原恵美子,今井健, 大江和彦
    • 学会等名
      第36回医療情報学連合大会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-11-21 – 2016-11-24
  • [学会発表] 電子的診療情報からの高次元特徴データを用いたEHR Phenotypingアルゴリズムの開発2016

    • 著者名/発表者名
      河添悦昌, 香川璃奈, 山口亮平, 桜井亮太, 篠原恵美子, 大江和彦
    • 学会等名
      第36回医療情報学連合大会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-11-21 – 2016-11-24
  • [学会発表] 特定患者集団の抽出(Phenotyping)手法確立に向けた技術的課題に関する考察2016

    • 著者名/発表者名
      香川璃奈, 河添悦昌, 井田有亮, 篠原恵美子,今井健, 大江和彦
    • 学会等名
      第 30 回人工知能学会全国大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2016-06-06 – 2016-06-09

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公開日: 2018-01-16  

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