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2016 年度 実績報告書

アルツハイマー病における脳内糖代謝機構の病態生理学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 16J05570
研究機関千葉大学

研究代表者

泉尾 直孝  千葉大学, 大学院医学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワードアルツハイマー病 / 糖尿病 / インスリン抵抗性 / ノックインマウス
研究実績の概要

これまでに、全身性のノックイン型インスリン受容体変異マウス(mIR-KI)とアルツハイマー病モデルマウス(NLGF)を掛け合わせて作製した、インスリン抵抗性ADモデルマウス(mIR-KI, NLGF)が著明な認知症状および精神症状を誘導することを明らかにしてきた。本研究課題では、そのメカニズムについて以下の2点について解析した。
A.mIR-KI, NLGFにおける低分子代謝物の解析:キャピラリー電気泳動質量分析を利用し、低分子代謝物について網羅的に解析した。NLGFの血漿では、血中グルコース濃度の上昇に同調して、神経伝達物質に関連する低分子化合物が変動していた。予想に反し、血漿中では糖代謝物の変動は小さかった。
B.ノックイン型神経特異的インスリン抵抗性ADモデルマウス(Neu-mIR-KI, NLGF) の作製:mIR-KI, NLGFのAD症状増悪における、インスリン抵抗性の責任細胞を同定する。神経伝達物質の調節に関連が大きい神経細胞に着目し、特異的にインスリン受容体変異をノックイン誘導するADモデルマウスを作製する。Neu-mIR-KI, NLGFは、① 神経細胞特異的なCamk2a-CreERT2 ② 独自に作成するFlox-mIR-KI、 ③ NLGFの3系統を掛け合わせることで作製する。Camk2a-CreERT2とNLGFとの2系統の掛け合わせは完了しており、Flox-mIR-KIは現在作製中である。P1195L変異は、インスリン受容体遺伝子 (Ir遺伝子) の22のExonのうちExon 20に存在する。Exon 20ー22を連結した配列、およびその変異を含む配列とLoxPなどの付加配列を含むDNAを合成した。これにより、ベクターサイズを15 kb程度と短くすることで、KI標的化ベクターに組み込むことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

グルコース代謝物と神経伝達物質の関連について、メタボロームの導入により順調に解析することができた。また、脳内での変化にのみ注目していたが、全身レベルにおいても神経伝達物質の合成代謝が変動していることが明らかとなり、この点については予想以上の収穫を得ている。新規マウスの作製については、ベクター作製に少し手間取ったものの、その後迅速に進めることができ遅れを取り戻すことができた。CRSPR/Cas9システムを用いたコンディショナルノックインマウスの作製という課題自体に前例がなく、複雑な遺伝子設計ではあるが、新規マウス系統の樹立の見通しは明るい。

今後の研究の推進方策

血中において、グルコール濃度と神経伝達物質に関連する代謝物が同調的に変動していることが明らかになった。今後、脳内のグルコース量と神経伝達物質の合成代謝が同調しているのかを、メタボローム解析を用いて明らかにする。さらに、この変化がインスリンシグナルを介しているか否かを分子生物学的手法を用いて明らかにする。
Flox-mIR-KIは、作製したKIベクターを用いてES細胞へのインジェクションを実施し、変異導入クローンを選別したのち、キメラマウスの作製を経て確立を進める。ES細胞への変異導入には、CRISPR/Cas9システムを利用して実施する。オフターゲット効果のないguideRNAを設計し、標的配列と変異配列の組み換えを実現する。確立したFlox-mIR-KIとあらかじめ作製したCamk2a-Cre, NLGFとの交配により、神経特異的インスリン抵抗性アルツハイマー病モデル(Neu-mIR-KI, NLGF)を作製する。Neu-mIR-KI, NLGFに対して、行動病理学的な解析を実施し、その表現型のメカニズムについて、グルコース代謝およびインスリンシグナルに着目して解析する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Monoclonal antibody with conformation specificity for a toxic conformer of amyloid beta42 and its application toward the Alzheimer’s disease diagnosis2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuma Murakami, Maki Tokuda, Takashi Suzuki, Yumi Irie, Mizuho Hanaki, Naotaka Izuo, Yoko Monobe, Ken-ichi Akagi, Ryotaro Ishii, Harutsugu Tatebe, Takahiko Tokuda, Masahiro Maeda, Toshiaki Kume, Takahiko Shimizu, and Kazuhiro Irie
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 29038

    • DOI

      10.1038/srep29038

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] アミロイドβ「毒性コンホマー」を標的にしたアルツハイマー病の治療・診断法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      泉尾直孝, 久米利明, 村上一馬, 徳田隆彦, 前田雅弘, 入江一浩, 清水孝彦
    • 学会等名
      第137回日本薬学会年会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2017-03-25
    • 招待講演
  • [学会発表] Brain-specific superoxide dismutase 2 deficiency induces neurodegeneration in mice2017

    • 著者名/発表者名
      Naotaka Izuo, Yoshihiro Noda, Takahiko Shimizu
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール(長崎県長崎市)
    • 年月日
      2017-03-16
  • [学会発表] 脳特異的Superoxide dismutase 2欠損マウスは神経変性を誘導する2016

    • 著者名/発表者名
      泉尾直孝、野田義博、清水孝彦
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30
  • [学会発表] オメガ-3脂肪酸はミクログリアの活性化を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      笠原千尋、泉尾直孝、横手幸太郎、清水孝彦
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30
  • [学会発表] Identification of the “toxic conformer” of amyloid beta and its pathogenic contribution of Alzheimer’s disease2016

    • 著者名/発表者名
      Naotaka Izuo, Kazuma Murakami, Toshiaki Kume, Masahiro Maeda, Kazuhiro Irie, Takahiko Shimizu
    • 学会等名
      2016 Spring International Conference of the Korean Society for Gerontology
    • 発表場所
      Hotel Laonzena (韓国テグ)
    • 年月日
      2016-06-16
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Aβ42の22-23位におけるターン構造はAβ42誘発神経毒性を調節する2016

    • 著者名/発表者名
      泉尾直孝、久米利明、村上一馬、前田雅弘、入江一浩、清水孝彦
    • 学会等名
      第39回日本基礎老化学会大会
    • 発表場所
      伊勢原市民文化会館(神奈川県伊勢原市)
    • 年月日
      2016-05-27
  • [備考] 千葉大学医学部先進加齢医学のホームページ

    • URL

      http://www.m.chiba-u.jp/class/clin-cellbiol/research/contents/increasing_age.html#jump1

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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