研究課題
Sema3GKOマウスに超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAHFD食負荷)を行い、経時的に体重の変化を観察し、脂肪肝の程度などの検討を行った。16週齢(負荷8週)のマウスにおいて、Sema3GKOにおいて体重減少が認められたのに対し、WTでは体重増加が認められた。両群間で食餌摂取量に有意差はなかった。肝重量についても違いはなかったが、AST、γ-GTPに関して、Sema3GKOの方がWTに比して有意に低値であり、肝機能障害が軽減されている可能性が示唆された。脂質に関しては、総コレステロール、中性脂肪がSema3GKOの方がWTに比して有意に高値であった。これらを考察すると、末梢血のコレステロール値が上昇する一方で、肝臓の炎症は軽減されているという結果となり、コレステロールのクリアランスなどが関与していることも推察される。この結果に基づき、Sema3GKOでは肝臓の炎症が軽減されるという仮説を立て、検証を進めている。HE染色では明らかな脂肪滴の違いなどは見受けられなかったが、マッソントリクローム染色、シリウスレッド染色では、WTにおいて線維化が強い印象を受けた。実際にヒドロキシプロリンの定量を行うと、有意差は得られなかったが、WTにおいて高い傾向があった。しかし、NAFLD activity score、Sirius-red positive scoreの定量では、2群間に明らかな差は認められず、WTにおいて肝臓の線維化が強いという結論には至ることが出来なかった。次に、PCRにより各種炎症性サイトカインの変化を観察した。TNF-α、col1A1、col3A1、col4A1に関して、Sema3GKOの方がWTよりも有意に低値であり、MCP-1、IL-6に関しては有意差はないものの低値の傾向があり、これらの点については、仮説と矛盾しない結果が得られた。
3: やや遅れている
産前産後の休暇及び育児休業取得に伴い、平成28年度は当初の予定よりも研究内容を縮小した。そのため計画内容として、進捗状況は遅れている。今年度は「高脂肪食/超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAHFD)負荷モデルにおけるSema3Gの発現様式と肥満、脂肪肝に与える影響の検討」を中心に進めた。上記に述べたよう、超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAHFD)とは、脂肪肝、NASH、肝線維化の病態モデルであり、体重減少を抑制し、かつ短期間で線維化まで進行するという利点があることが知られている。まずCDAHFD食での検討を行っており、そこから得られた課題を引き続き検討する。また高脂肪食負荷での検討では、CDAHFD食と同様、Sema3GKOではWTに比して、有意に体重増加が少ないことが示された。HE染色、シリウスレッド染色では明らかな差は認められなかった。耐糖能に関しては、Sema3GKOではブドウ糖負荷による血糖上昇が有意に抑制され、インスリン抵抗性が小さいことが示された。これが体重の差異によるものか、肝臓の炎症の程度が関連しているのかは、現時点で結論はでていない。以上のように、高脂肪食負荷での検討がまだ不十分であり、CDAHFD食との違いなども考慮しながら実験を進める予定である。
今後はCDAHFD食負荷の検討で得られた結果を元に、更に疑問を追求すべく、検証を継続する。高脂肪食負荷に関しては、まだ炎症性サイトカインの検討などが不十分であり、肝臓の線維化、炎症などを評価する必要がある。また、Sema3GKOで体重減少が認められたことに着目して、腸管の構造の変化、リンパ管の発生の状態なども検討すべく、組織学的評価や免疫染色を行う予定である。その他、当初の予定として、以下を順次進める。・Sema3Gノックアウトマウス (Sema3G KO)ならびに野生型の糞便を無菌マウスに移植する(高脂肪食負荷、MCD食負荷、STZ-HFD食負荷を行い、経時的に表現型を観察する)・消化管上皮細胞特異的プロモーターを利用したSema3Gの過剰発現(Villin遺伝子プロモーターの入手とトランスジェニックマウス(TG)作成用のコンストラクト作成する・NASH病態モデルにおけるSema3G過剰発現が病態に与える影響を検討する
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Geriatrics&Gerontology International
巻: 17 ページ: 2068-2073
10.1111/ggi.13022