研究課題
昨年度までの研究において、超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAFHD食負荷)を行い、Sema3GKOマウスでは体重減少が認められたのに対し、野生型では体重増加が認められた。また、Sema3GKOマウスでは肝機能障害が軽減されている可能性が示唆された。次に8週齢のマウスに対して8週間の高脂肪食負荷を行なったところ、やはりSema3GKOマウスは野生型に比較して有意に体重増加が小さいことが示された。ブドウ糖負荷での血糖上昇はSema3GKOにて有意に小さく、インスリン低血糖試験(ITT)ではSema3GKOにてインスリン抵抗性が有意に小さく、野生型に比較して耐糖能が良好であることが示された。肝障害や肝の線維化については、CDAHFD食負荷の時と同様に、PCRや染色等で評価を行い、わずかにSema3GKOで軽減している結果であったが、有意差は認められなかった。高脂肪食負荷では、CDAHFD食負荷に比較して肝障害が軽度であったため、両群間での差がはっきりとしなかったと考えられる。次に高脂肪食負荷をより強力に行うために、5週齢のマウスに対し、9週間の高脂肪食負荷を行なった。前回の実験と同様、Sema3GKOマウスは野生型に比較して有意に体重増加が小さいことが示され、ブドウ糖負荷、ITTでも再現性が得られた。DEXAを用いて、マウスの体脂肪量を測定したところ、Sema3GKOマウスは野生型に比較して、体脂肪量が有意に少ないことが分かった。野生型の脂肪組織、褐色脂肪組織においてRT-PCRにてSema3Gの発現が確認でき、in situ hybridizationにて血管内皮に特異的な発色が確認できた。in vitroの実験では3T3L1を脂肪分化させ、Sema3Gの発現が経時的に上昇することが示され、既報の通り、脂肪分化の新たなマーカーになり得ることが示された。
2: おおむね順調に進展している
高脂肪食負荷モデルにおけるSema3Gの発現様式と肥満、脂肪肝に与える影響の検討を目的として、研究を進めた。その際、Sema3GKOマウスは野生型マウスに比較して、体重増加が少なく、ブドウ糖負荷試験とインスリン抵抗性試験の結果から、耐糖能が良好であることが明らかとなった。そのため、肝臓だけでなく、脂肪組織や褐色脂肪組織に着目して、脂肪分化や炎症浸潤などの機序について研究を行なった。脂肪組織での脂肪分化マーカー(CEBPα、PPARγ)、炎症性サイトカイン(MCP-1、TNF-α、IL-6)などについてPCRにて発現を確認したところ、両群間で明らかな差は認められなかったが、Iba-1の免疫染色を施行し、その定量評価を行なったところ、Sema3GKOマウスでより炎症が軽減されていることが明らかとなった。in vitroの実験では、3T3L1を脂肪分化させ、経時的にSema3Gの発現が上昇することを示すことが出来た。Sema3Gは肥満関連の遺伝子であることも報告されているため、今後も脂肪分化や肥満とSema3Gの関連をさらに解析する予定である。当初に計画していた肝臓の研究に加えて脂肪組織との関連を含め、以上のように研究の進展が認められたことを評価する。
今後はSema3GKOと野生型での体重差の原因を突き止めるべく、基礎代謝の測定や摂餌量や運動量、ミトコンドリア活性の測定などの検討を行うことを予定している。Sema3GKOマウスでは、高脂肪食負荷による肥満抵抗性が認められ、体重増加が少ないこと、耐糖能が良好であること、脂肪量が少なく、脂肪組織中の炎症が軽減されている可能性が示されている。RNA sequenceの結果から、ヒトの脂肪組織にSema3Gが強く発現していることが分かっており、肥満関連の遺伝子であることも報告されているため、Sema3Gと肥満、脂肪分化の関連を更に検討したいと考えている。また、in vitroの実験では3T3L1を脂肪分化させ、Sema3Gの発現が経時的に上昇することが示されたが、脂肪細胞にNrp1,2、PlexinA1等の発現が確認出来たため、Sema3Gの作用を期待して、Sema3Gリコンビナントの添加実験を行う予定である。他にもヒトの脂肪前駆細胞の培養や、Sema3GKOマウス、野生型マウスの精巣周囲脂肪組織を採取し、脂肪細胞や間質細胞の培養を行い、脂肪分化の差を観察することも予定している。また肝臓に関しては、NASHモデルにおけるSema3G欠損・過剰発現が病態に与える影響を検討する。具体的には、Sema3G KOマウス、野生型コントロールマウスのコロニーの確立を行い、高脂肪食負荷、MCD食負荷、STZ-HFD食負荷を行い、経時的に表現型を観察する。
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