研究課題/領域番号 |
16J05629
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保田 彩 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 下部白亜系 / 堆積学 |
研究実績の概要 |
過去の地球・生命史上で発生した地球表層イベントは,その多くが地層中の “異質性”の発見によって認識されてきた.この発見を皮切りとして,堆積学的手法,年代・岩層層序学的手法などを用いた数多くの研究が,イベントの解明を目指して進められてきた.本研究は,新規的なアプローチを用いて,地層の中から“異質性”を(1)発見し,(2)解読,(3)対比することで,隠されてきた地球表層イベントの抽出を行う.最終的には,研究の起点となりうる新しい“異質性”を提示することを目的としている. 本研究では,これまで認識されてこなかった白亜紀中期ユーラシア大陸東端の大規模沿岸崩壊イベントを認定する.具体的には,(1)植物化石密集層の詳細な堆積相解析を行い,巨大津波イベントの復元を行う.次に,(2)白亜紀中期アプチアン末期ユーラシア大陸東端域に集中するカタストロフィー堆積物を詳細な時間軸上で解読・対比し,イベントの時間的・空間的規模を明らかにする.平成29年度は,(A)野外地質調査(堆積構造観察および岩層層序の取得)によって,遠洋域への砕屑物の大量供給プロセスを復元した.続いて,(B)イベントの追跡を目指した広域野外地質調査によって,異常堆積物の側方変化を検討した.(C)堆積物の連続研磨・撮影を行い,堆積物の侵食~運搬システムに時間的制約・経路の制約を与え,そのプロセスを示した. これまで,イベント堆積物の広域対比は,キーベットの追跡が一般的であった.一方本研究では,岩相が異なる堆積物の広域対比を試みている.対象の堆積物は,それぞれバックグラウンド堆積物とは異質であり,何らかの現象を示唆していたものの,その形成要因はローカルなものとして解釈されてきた.本研究において,これら岩相が異なる堆積物に対して広域対比を行うことで,これまで隠されていた地球表層イベントを新たに見出すことが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,(A)北海道北部下部白亜系野外地質調査・微岩相解析(2017年4月~2018年3月)を行い,異常な堆積構造の詳細な露頭観察によって,遠洋域への砕屑物・植物化石の大量供給プロセスを復元した.(B)北海道~東北地方において,イベントの追跡を目指した野外地質調査(2017年4月~11月)をおこない,下部白亜系に集中する異常堆積物の詳細な岩相層序を確立した.また,100m, 10km, 100kmオーダーでの異常堆積物の側方変化を検討した.(C)堆積物の連続研磨・撮影(2017年4月~11月)を行い,堆積物の侵食~運搬システムについて時間的制約・経路の制約を与え,そのプロセスを示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究は比較的順調に進行している.研究の成果の一部は,国際誌に投稿予定である.今後は,北海道地域の野外調査の継続・終了(2018年6月~7月)に加えて,(A)堆積物の未固結構造に注目した連続研磨・撮影分析(2018年4月~11月)および堆積復元実験,大型放射光実験(2018年4月・10月),CTスキャン,各種顕微鏡観察(2017年8月~2018年3月)をおこない,巨大津波イベントの堆積プロセスの解明を目指す.(B)これまでに得られた年代層序・化石層序に加えて,すでに採取済みの試料から花粉層序(2018年6月)を試み,複合的な年代層序を確立し,各異常堆積物の同期性を検討する.最後に.イベントの時間的・空間的規模を明らかにしながら,遠洋性堆積物が記録する沿岸域大規模崩壊イベントの提唱を行うことで,これらの認識の契機となる,新たな“異質性”の提示をめざす.
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