研究実績の概要 |
(1)低励起状態でのGamow-Teller(GT)遷移確率の上昇と陽子中性子間相関の関係について議論した。具体的には, p殻N=Z=odd核である6Li,10B,14Nを対象にして、アイソスピン射影されたAMDを用いて系統的にGT遷移を計算した。中性子過剰なN=Z+2核のJπT=0+1状態からN=Z=odd核の1+0状態へのGT遷移強度を計算し, 基底状態や励起状態からの遷移の中にGT和則の50%以上を尽くすものを見出した. これらの遷移強度の集中は, nn(ST=01)状態からpn(ST=10)状態へのスピン・アイソスピンフリップ遷移という見方でおよそ説明がつくことを示した。この内容についての論文がPhysical Review Cに掲載された。 (2)スピン・アイソスピンフリップ遷移の考え方をより重い原子核に適用するために, 22Neから22NaへのGT遷移強度を計算した。これらの原子核は(1)で詳しく調べられた10Beや10Bと同様にプロレートに変形した原子核であるが、低励起状態へのGT遷移の振る舞いは異なる様相を見せる。本研究では基底状態からのGT遷移強度が異なる二つの1+0状態へ分裂する現象に注目して、陽子中性子対の形成とそのSz固有状態への崩れの観点から議論した。終状態の1,2番目の1+0状態はそれぞれK=0,1状態に対応し、これは陽子中性子対がそれぞれSz=0,1の状態に崩れたことに対応する。これらの状態は始状態にGT演算子のうちスピンを変えないものを作用させた場合とスピンを変えるものを作用させた場合に対応する。このようなGT強度のフラグメントは、pf殻核などで実験的に観測されているフラグメントの最も単純なケースとして捉えることができる。
|