研究課題/領域番号 |
16J05703
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寶谷 拓磨 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍溶解性ウイルス / レオウイルス / 低酸素誘導因子 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
新規抗がん剤として注目を集めている腫瘍溶解性ウイルスの一つであるレオウイルスは腫瘍細胞特異的に増殖しアポトーシスや抗腫瘍免疫を活性化することで抗腫瘍効果を示すと考えられている。近年新たなレオウイルスの作用としてHIF-1αの発現量低下を誘導することが明らかになった。HIF-1αは腫瘍の増悪化に重要であることからHIF-1αの発現低下はレオウイルスによる抗腫瘍効果に寄与していると考えられる。しかしながら詳細なメカニズムは明らかにされておらず、また培養細胞を用いた検討しか行われていない。本研究ではメカニズムの解明並びに培養細胞のみならずマウス皮下腫瘍においてもレオウイルスによるHIF-1αの発現量低下が誘導されるかについて検討を行っている。 昨年度までの検討によりレオウイルス由来の二本鎖RNAおよびpolyI:Cを作用させることで顕著なHIF-1αの発現低下の誘導が観察された。本年度はさらに詳細な検討を行ったところ、HIF-1αのみならず他にもタンパク質レベルで発現低下するタンパク質を数種類同定することができた。同定した分子もHIF-1α同様腫瘍の増悪化に関与していたことから、これら分子の発現低下誘導機構を明らかにすることでレオウイルスを用いたがん治療の最適化が可能になると予想される。 また、レオウイルスによるHIF-1αの発現量低下の誘導が培養細胞だけでなくマウス皮下腫瘍においても誘導されるかについても検討を行った。HIF-1α依存的にルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍細胞株を作製し、ヌードマウスの皮下へ移植し担がんマウスを作製した。そこへレオウイルスを静脈内投与したのち経時的にin vivo imaging解析を行ったところ、顕著な発光の減弱が観察された。したがってレオウイルスは静脈内投与後マウス皮下腫瘍においてもHIF-1αの発現低下を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レオウイルスによるHIF-1α発現量低下誘導機構の詳細なメカニズムの解明については当初想定していた分子の関与が認められなかったため、さらに候補分子を広げて検討を行った。その結果、研究実績の概要に記載の通り、新たな分子の同定に成功したことから、それら分子を利用して今後さらに発展できるものと期待している。またマウス皮下腫瘍を用いた検討に関しては当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
詳細なメカニズムの解析については本年度に同定した二本鎖RNAを作用させることで発現量の低下が認められたタンパクの発現低下誘導機構とHIF-1αの発現低下誘導機構を比較することでさらに詳細なメカニズムについて解析を進めていく予定である。またマウス皮下腫瘍を用いた検討については、培養細胞においてHIF-1αの発現低下が認められたUV照射により不活化したレオウイルスを用いて同様の検討を行う。さらにレオウイルスによるHIF-1αの発現低下が実際の治療効果に寄与しているかどうかについて明らかにするために、培養細胞を用いた検討で有意に発現低下が見られたHIF-1αの標的遺伝子であるグルコーストランスポーターGLUT1の発現低下をin vivo imagingにより解析する予定である。
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