研究課題
ブレーザー天体は、相対論的ジェットを伴う活動銀河核の中でも、そのジェットを正面から観測している天体である。しかし、その変動起源に関しては未だ議論の最中である。このような状況を踏まえ、これまでの研究活動において、可視光データ解析パイプラインの開発に加え、様々な波長域における変動の特性を解明し、その変動起源の物理現象の解釈を行った論文を国際ジャーナルに投稿済みである(Centaurus A, Tachibana et al. 2016; V404 Cyg, Tachibana et al. 2017)。このような状況下で、H29年度は、新たな解析手法の習得と世界との連携観測体制の強化のために、約8ヶ月間アメリカ合衆国カリフォルニア州 California Institute of Technology (Caltech) に滞在した。滞在中は、主に機械学習と深層学習の技術を用いたデータ解析手法の習得を目指し、機会学習を用いたCCDイメージ上での銀河と星の識別システムを開発した(Tachibana and Miller, 5月末投稿予定)。本システムは、Caltech が主導する大規模可視光サーベイプロジェクトである Zwicky Transient Facility (ZTF)の解析パイプラインにインストール済みである。また、Catalina Real-time Transient Survey (CRTS) のデータを用いて、活動銀河核の可視光光度変動を深層学習の技術を用いてモデル化・予測するための研究を Caltech の研究者とともに進めており、この研究結果も今年度末までに投稿予定である。加えて、H29年度までで得られている複数のジェット天体に関する研究の内容に関する論文も執筆中であり、H30年度末までに合計5本の論文を国際ジャーナルに投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
H29年度のCaltechへの長期滞在により、光度変動から隠れた情報を引き出す技術の習得と海外の研究者との連携に関して大きな進捗が得られた。また、H29年度に得られた解析の結果は既にその殆どが論文化の段階にあるため、H30年度までの申請者の研究目標の達成に向けて、概ね申請当初の計画通りに進んでいると判断できる。
活動銀河核ジェットからの放射と、そのミニチュアとも言えるブラックホール連星の相対論的ジェットからの放射はその解釈において相補的な関係にあるとの認識のもと、ZTF, CRTS, MITSuME のデータを用いた活動銀河核ジェットとブラックホール連星からの放射機構に関する論文を執筆する。H30年度末までに、本研究課題に取り組む中で得られた全ての研究結果を投稿論文としてまとめる。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 69 ページ: 63-75
10.1093/pasj/psx040
The Astrophysical Journal
巻: 850 ページ: 155-164
10.3847/1538-4357/aa93f0