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2017 年度 実績報告書

ASTRO-H衛星の超高分解能分光観測による中性子星のコンパクトネスの研究

研究課題

研究課題/領域番号 16J05852
研究機関東京理科大学

研究代表者

窪田 恵  東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード宇宙 / X線 / 中性子星
研究実績の概要

中性子星低質量連星系 (NS-LMXB)は、太陽質量以下の比較的軽い星と、中性子星との連星系で、伴星から絶えず中性子星に質量降着が起きている (Type-I バースト)。伴星からの降着物質は、角運動量を保持したまま降着し、降着円盤を形成する。また、降着物質は中性子星表面に堆積し、臨界温度を超えると核融合反応を起こし爆発する。NS-LMXBはスペクトル形状から、ソフト状態とハード状態に分けられる。
ソフト状態は、降着円盤からの軟X線放射が卓越している時期で、ハード状態は、中性子星表面もしくは円盤からの黒体輻射が中性子星周辺に存在する希薄な高温プラズマ (コロナ) で逆コンプトン散乱されて硬X線で明るい時期に対応する。これまでの研究から、NS-LMXBの観測スペクトルは、どちらの状態においても、大局的には、降着円盤からの放射と、中性子星表面からの黒体輻射がコロナで逆コンプトン散乱された2つの成分で説明できることが知られている。しかし、典型的なNS-LMXB であるわし座 (Aql) X-1のおよそ30 keV付近に、前述の2つの成分では説明できない超過構造があることを私たちは見つけた。この構造がType-I バーストにより生成された重元素由来であることが、分光観測から証明できれば、初めて元素合成の直接的な証拠が得られることになる。また、この元素起源の構造のエネルギーの重力赤方偏移から、中性子星のコンパクトネスを調べることができる。当初予定していたASTRO-H衛星は、姿勢系の事故により失われ、データを使うことができなくなったので、この構造を使って研究を継続することとした。昨年度、この構造が Gaussian モデルまたは再結合放射モデルで、統計的に矛盾なく説明できることがわかったので、今年度は、この2つのモデルに対して、考えられるシナリオを考察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

構造を説明する2つのモデルについて、それぞれ考えられるシナリオの考察まで完了した。それぞれの定性的なシナリオは以下の通りである。
(1) Gaussian モデル:大気中にある中性もしくは電離した重元素からのK輝線放射。
(2) 再結合放射モデル:なんらかの原因により電離した重元素が、大気中の自由電子を捕獲してX線を放射。
現在、Aql X-1に関する解析結果を論文にまとめている。このように、研究としては成果をまとめる段階にあるので、進捗は概ね順調であると言える。

今後の研究の推進方策

現在執筆中の論文は4月末に PASJ に投稿し、今年度中に受諾を目指す。7月にはアメリカで行われる国際会議、COSPARで口頭発表を予定している。あわせて今年度は、これまでの研究結果を学位論文としてまとめる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] 高エネルギー X 線の偏光を検出するマイクロパターン TPC 型偏光計の開発2018

    • 著者名/発表者名
      若松孝也、大久保美穂、窪田恵、周圓輝、小田苑会、早藤麻美、中野俊男、北口貴雄、岩切渉、玉川 徹、榎戸 輝揚
    • 学会等名
      日本天文学会
  • [学会発表] 高エネルギーX線を検出するマイクロパターンTPC型偏光計の開発2017

    • 著者名/発表者名
      早藤麻美、中野俊男、北口貴雄、玉川徹、岩切 渉、若松孝也、大久保美穂、窪田恵、榎戸輝揚
    • 学会等名
      日本天文学会
  • [学会発表] Time Projection Chamberとフーリエ合成による撮像偏光計の基礎研究2017

    • 著者名/発表者名
      中野俊男、玉川徹、早藤麻美、岩切渉、北口貴雄、榎戸輝揚、窪田恵
    • 学会等名
      日本天文学会
  • [学会発表] 偏光観測衛星IXPE搭載用GEMの画像処理を用いた品質検査法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      周圓輝、村田直人、窪田恵、小田苑会、大久保美穂、若松孝也、玉川徹、中野俊男、早藤麻美、岩切渉、北口貴雄、榎戸輝揚
    • 学会等名
      日本天文学会
  • [学会発表] IXPE 衛星搭載用 GEM の評価2017

    • 著者名/発表者名
      周圓輝、村田直人、窪田恵、小田苑会、大久保美穂、若松孝也、玉川徹、中野俊男、早藤麻美、岩切渉、北口貴雄、榎戸輝揚
    • 学会等名
      MPGD研究会
  • [学会発表] 高エネルギーX線の偏光を検出する TPC 型偏光計の開発2017

    • 著者名/発表者名
      大久保美穂、早藤麻美、若松孝也、中野俊男、玉川徹、北口貴雄、窪田恵、小田苑会、周圓輝、岩切渉、榎戸輝揚
    • 学会等名
      MPGD研究会
  • [学会発表] Improvement of GEM gain uniformity: production and verification techniques2017

    • 著者名/発表者名
      M. Kubota, Z. Yuanhui, T. Enoto, A. Hayato, W. Iwakiri, T. Kitaguchi, T. Nakano, S. Oda, T. Tamagawa
    • 学会等名
      MPGD 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] The GEM stability test against frequent high voltage on and off switching2017

    • 著者名/発表者名
      S. Oda, Dr. A. Hayato, K. Nishida, M. Kubota, T. Kitaguchi, T. Enoto, T. Tamagawa, T. Nakano, W. Iwakiri, Y. Zhou
    • 学会等名
      MPGD 2017
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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