研究課題
本研究では、マントルダイナミクスの解明に向け、水に起因した物性変化を結晶化学原理により体系的に理解することを目的とし、高圧実験を主とした鉱物中の水素位置の決定および、今後の発展として、低温高圧その場IRへの装置の改良を試みた。常温における高圧その場IR実験の手法がおおむね確立したため、本年度は極低温下における無水鉱物中の水素のIR観察を試みた。一般に、物体の温度を極低温(~10 K)まで下げIRスペクトルを測定することで、原子の熱振動が弱まり、ブロードなIRバンドは縮退し、シャープなバンドとなることが期待される。徳島大学野口直樹助教の協力の下、高圧実験により水を含ませたFoとEnの多結晶体を、8 Kという極低温下でIRスペクトルの測定を行った。本測定においては、残念ながら常温下のスペクトルと比べ大きな変化は見られなかった。しかしながら、近年Geiger and Rossman (2019) においてガーネットの80 KでのIRスペクトルの観察が報告されており、こちらでは常温下で1つのブロードなバンドだったものが、低温下では2つのシャープなバンドに分離していく様子が報告されている。鉱物によって変化が見られるものと見られないものがあるようであるが、シャープなバンドへと変化する鉱物に関しては今後水素位置決定の大きな助けとなることが期待される。そのため、現在開発途上ではあるものの、80 K程度の低温下での高圧その場IR測定を行うことを目的とし、岡山大学惑星物質研究所に設置された顕微真空IR装置の改良を行っている。低温の実現には、液体窒素を用いて熱伝導によりDACごと冷却することを想定している。しかしながら、熱伝導で冷却を実現するためには、10-4 Pa程度の真空度が必要で、現状の真空度では不十分であることが判明し、真空ポンプの取替えを含め、現在試行錯誤を加えている段階である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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American Mineralogist
巻: 104 ページ: 588~594
10.2138/am-2019-6823
Comptes Rendus Geoscience
巻: in press ページ: in press
https://doi.org/10.1016/j.crte.2018.07.004