研究課題
本研究は、Leukocyte immunoglobulin-like receptor (LILR) B2とHuman leukocyte antigen (HLA) -G2の分子認識機構を中心に、LILRB2とリガンド群との分子認識機構の解明を目的としている。今年度は、HLA-G2分子の挙動を詳細に理解するために、HLA-G2野生型(WT)と、HLA-G2のダイマー形成に寄与せず、分子表面に存在することが電子顕微鏡解析や生化学的解析により示唆されていたフリーのシステイン残基(Cys42)をセリン残基に置換した変異体(C42S変異体)組換え蛋白質を用いた解析を行った。ブルーネイティブPAGEや還元剤存在化でのゲルろ過クロマトグラフィーの解析により、Cys42がダイマー以上の多量体形成に寄与している可能性を示唆す結果を得た。また、LILRB2の既知リガンドとして、HLA-G2の他にHLA-B27、ANGPTL2が報告されているが、LILRB2に対する結合の競合性や結合様式の差異を比較するために、HLA-G2以外のLILRB2リガンド(HLA-B27及びANGPTL2)も組換え蛋白質として調製した。いずれも結合に重要であるドメインを、大腸菌で封入体として発現させ、巻き戻し法により調製できることを確認した。さらに、HLA-G2蛋白質の機能を細胞レベルで解析するために、ヒト末梢血単核球中を用いた実験を開始した。ヒト末梢血単核球中から、単球を分離し測定した結果、受容体であるLILRB2を発現していることがわかった。また、得られた単球から分化させた樹状細胞についてもLILRB2を発現していることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
今回、HLA-G2のフリーのシステイン残基によるさらなる多量体形成の可能性が示唆されたので、構造解析のためにはC42S変異体を用いた方がより解析に適していることがわかった。また、LILRB2の既知リガンドの組換え蛋白質を調製することができ、それらを用いてLILRB2との結合に関する解析を進める準備ができた。これまで使用してきた組換えHLA-G2蛋白質の細胞レベルの解析も解析条件を決めることができた。以上の理由から「おおむね順調に進んでいる」と評価した。
今後は、引き続きLILRB2とHLA-G2の分子認識機構を中心に、LILRB2とリガンド群との分子認識機構解明についての研究を進めるために、HLA-G2蛋白質の性質や機能を理解するための研究を進めていく。今回、調製することができた、LILRB2の既知リガンドとHLA-G2を用いて、LILRB2との結合の競合性や結合様式の差異を解析していく。さらに、これまで使用してきた組換えHLA-G2蛋白質の細胞レベルでの機能解析について、測定条件などが決まったので、引き続き解析を進める。
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