本研究は、20世紀初頭イタリアの文学と映画にみられる身体表象を表象文化論的観点から考察するものである。採用最終年度となった今年度は、未来派映画研究を中心に、申請研究の総まとめを行うことを目標に研究活動に従事した。昨年度より継続してきた初期映画研究では、喜劇映画を中心的に扱いながら、同時期に流行した史劇映画、ディーヴァ映画に関する調査も並行して進めてきた。その結果、喜劇映画、史劇映画、ディーヴァ映画それぞれにおける身体表象の特徴を抽出することに成功した。この成果を口頭発表にまとめ、5月に早稲田大学で開催されたイタリア言語・文化研究会第153回例会にて、「イタリア映画の身体表象―1910年代を中心に」と題して報告した。さらに上記の研究を通じて得られた成果を未来派映画に関する知見に照らして考察した論文「1910年代イタリア映画のなかの未来派映画」を執筆し、『立命館言語文化研究』第30巻3号に投稿した。加えて、昨年度中心的に実施した映画『ピノッキオ』をめぐる国内外での調査結果および複数の研究成果をまとめて再検討したうえで論文を執筆し、国内の雑誌に投稿した。国外での調査は、2018年6月21日から2018年7月5日、および、2018年10月9日から2018年10月27日に実施した。一度目の渡航はボローニャ復元映画祭への参加を主な目的とした。二度目の渡航では、ポルデノーネ無声映画祭への参加に加え、ボローニャ市内図書館およびシネマテークでの映画関連の資料調査を主要な目的とした。
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