研究実績の概要 |
1. チタン系ペロブスカイトにおけるアニオン交換反応 先行研究では、酸水素化物のアンモニア気流処理によって、窒素-水素アニオン交換反応を実現し、(O,H,N)3種複合アニオン化合物を経由した酸窒化物の合成を報告した。本研究では酸窒化物を金属水素化物(CaH2)で還元することで、水素-酸素アニオン交換反応による(O,H,N)3種系の合成を試みた。その結果、わずかな量の窒素でも水素挿入量が劇的に減り、窒素の多い領域では交換反応が進行しないことが明らかとなった。様々な要因を考慮した結果、この現象は窒化物イオンの低い拡散能に由来する、すなわち速度論的因子の影響である可能性が高い。本成果は近日中にJ. Solid State Chem.誌に投稿する予定である。またその仮説、すなわちCaH2還元反応における速度因子の寄与を考慮すれば、アニオンの拡散能の向上がアニオン交換反応の促進をもたらすことが期待できる。そこで前駆体のアニオンサイトに意図的に酸素欠損を導入することで、水素挿入量の増大を狙った。その結果、わずかな酸素欠損の導入で、水素挿入量が大きく増大することがわかった。本成果に関する論文を現在執筆中である。
2. 新規鉄オキシカルコゲナイドBaFe2Se2Oの合成とその複合アニオン配位由来の磁性 高温高圧法を用いることでtrans-FeO2Se4八面体を有する新規層状化合物BaFe2Se2Oの合成に成功した。本物質は低温で反強磁性を示し、そこでは正方格子上で隣り合うスピンどうしが直行した、大変ユニークな磁気構造(2-kモデル)を形成する。我々はtrans-FeO2Se4八面体の結晶場分裂こそが異方的なスピンの起源であり、その規則的な二次元集合が2-k磁気構造を形成することを示した。本成果はRhys. Rev. B誌に掲載された。
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